思い出せるのは、

白と、黒。

眩いほどの、

眩しいほどの、そのコントラスト。

 

空間を形作る道は、その中間の、

どちらかと言えば白寄りの、明るい灰色だった、と思う。

メインの幅広な通りと、その両脇に少し幅の狭い歩道のような道があって。

メインの通りを往く列の先頭に立つのは、

各々の手に大きな白い旗を持った二人。

 

あの旗は神聖なものなのだと、その人は言った。

確かにそう感じさせるような、厳かなものであった。

 

その世界には、"それ"が見える人と見えない人がいた。

自分は見える側の人間だった。

"それ"は人の輪郭をした、真っ黒な何か。

顔も何もない、人の形をした、

何か。

 

それらは目的も無く、歩道をうろついているように見えた。

メインの通りには入れないようで、

時折、歩道を往く人がぶつかっては、

あぁ、だの、うー、だの、

大層気味の悪い、低い声で恨めしげに呻いていた。

 

自分には、それがとても恐ろしくて、

ぶつからないように避けて歩いていたのだけれど、

見えない人達は、その姿はおろか、声も聞こえないようで、

涼しい顔で灰色の道を往く。

 

やがて辿り着いた道の先は、白で埋め尽くされていた。

みんな白い。肌も、服も。

髪だけが黒々としていて、

それは日本人には当たり前のはずなのだけれど、薄気味が悪かった。

みんな、押し並べて顔が無かったからかもしれない。

 

のっぺらぼうなのに口だけはあって、

幸福そうに笑うのだ。

 

その口から流れ出るのは、

果たして星の蜜か、

はたまた、墨の毒か。

 

 

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不思議系だけど結構印象に残った夢オチ。