もう何度目か分からない。
金縛りに遭う夢だ。
これは、目が覚めない夢。知ってる。
でも、これまでの経験だと目が開かないのに、
今回は割とあっさり目が開いた。
寝ている自分の左側に、障子が見える。
実家の、子供の頃に寝ていた部屋の障子だ。
今住んでいる部屋には、障子なんてものは無いのだけれど。
でも、何故だか自分にはそれが判断できない。
ここは、いま、自分が寝ている、自分の部屋?
それなら、自分はちゃんと「起きている」はず。
でも、自信がない。
まだ夢の中にいるんじゃないか、という疑問が拭えない。
頭の後ろには、ソファの背凭れが見える。
実家と同じ配置。
左に障子。
後ろにソファ。
左に障子、
後ろにソファ、、
、
ソファなんて、あったっけ。
ああ、
自分は、まだ「起きてない」。
これは、夢、だ。
なら、起きないと。
今回は、どうすれば起きるんだろう。
すると、母さんの声がした。
早く起きなさい、と
その声に、何らかの返事をしたら、また「目が開いた」。
そのことに安堵して。
ああ、やっと「起きる」ことができた、と。
安心した矢先、
見えたのは、
左に障子、後ろにソファ。
ぞっとした。
どうしよう、どうしよう。
なんで起きないの。なんで、なんでまだ夢の中なんだ。
動揺よりも、恐怖が勝った。
すると、また母さんの声がして。
まだ起きてないの、という声に、
ねえ、と怯えた声で返す。
どうしよう、起きられないよ、
どうしたら起きられるの。
そうしたら、母さんの声は
誰かの笑い声に変わった。
はははははははははははははははは、
気がついたら、声を上げて笑っていたのは自分だった。
ははははは、と
大層低い声で笑っていた、その声でようやく「起きた」。