「ね、人ってあんなフツーに飛べるもんなの?」

 

その言葉に、少し下にある横顔をちらりと伺えば、彼もまた下を向いていた。

高所が苦手な人でなくても足が竦むであろう高さ。しかし彼は平然と建物のへりに腰掛け、宙空に足をぶらぶらさせている。

その遥か下。

まるで空を駆けるかのように、建物の間を自由自在に飛び回る2つの影。

 

「いいや、普通の人は空は飛べないよ。彼らはそもそもヒトではないし、飛行するための特殊な装置を付けているんだ。まだ開発段階らしいがね」

 

ふうん、と分かったような分からないような曖昧な頷きをひとつして、彼はまた視線を下へやった。頼むから身体を前のめりにしないで欲しい。落ちやしないかと内心冷や冷やしてきた。まあ最悪、下で駆け回っている2人に助けてもらえばいいのだが。

彼の目はキラキラと輝いていた。きっと無意識だろうが、口元は笑みのそれになっている。いいなあ、と言わんばかりの表情だ。言葉には出さずとも、顔がそう言っている。

 

「おれもあんな風に飛べるようになりたいなあ...」

 

ぽつりと溢れた呟きに、やはりそうか、と納得した。

 

「きっと訓練すればできるようになるだろうさ。今は開発中だから、暫くは無理だろうけど」

 

自分自身は体格的に厳しいので考えたことは無いが、空に憧れる気持ちを持つ人が多いのは知っている。この世界の空は危険が多いが、しかしだからこそ魅力的なのだという意見にも同意だ。彼の夢見る気持ちも理解できる。

なので、その背を小さく押したつもり、だったのだが。

 

「だよねボス、やっぱ訓練って大事だよね!兄貴、訓練しよ!!」

 

勢い良くこちらを振り返ってガッツポーズをした彼の目は一層輝いていた。

うん、眩しい。輝いてる。最高にキラッキラしてる。

思考回路が一瞬停止した、その一瞬の間に、彼は身を宙へと投げ出した。

 

スローモーションのように見えた。

へりから消えた身体を追うように、彼が身に付けている特徴的な長い装束がひらりと視界を横切って、そして消えた。

へりに座っていた彼を挟んだ向こう側、一歩手前のフェンスに背中を預けていた男は動じた様子もなく、一部始終を視線だけで追っていた。

なぜ、という言葉を発するよりも先に、と呆けていた思考回路をとにかく回す。下に例の2人がいる、彼らに助けを!

 

そう思い、遥か眼下へとへりから身を乗り出した、のだが。

 

----------

 

max中途半端だけど時間かかり杉なんでここでowaru

全ッ然設定決まってない奴だからフィーリング感大

開発中の装置がまんまイカロスって名前だったからこの曲もそのイメソンになっちゃった でも「彼」はそれでなくて、とある手段を用いて飛べるのだ

その手段についての設定も全ッッッ然決まってなくてほんと草

 

11:イカロス(GReeeeN)