澄み切った青空から柔らかな陽射しが降り注ぐ、とある穏やかな昼下がり。
そこかしこから談笑が聞こえてくるような昼休みの最中に、
何の前触れもなく、それは起こり。
「なァ、トリガー」
平穏そのものだった日常を、それはそれは派手にぶち壊した。
「今日、訓練なんてあったか?」
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構内放送で緊急事態がどうとか言っていたが、すぐに沈黙した。制圧されたのだろう。流石といった所か。お陰で混乱は加速度的に増している。ちらりと窓の外に目をやれば、一番近い門の前で学生達が銃を向けられているのが見えた。
ぐ、と唇を引き結んで前を向く。今は、駄目だ。両脇に二人を抱えたまま、ひた走った。少し離れて足音が追ってくるが、地の利はこちらにある。しかし中枢が制圧されたとなればジリ貧なのは間違いない。圧倒的不利に立たされているのはこちら側だ。
とにかく、この二人だけでも安全な場所へ連れていかなくては。シェルターが機能していれば良いのだが、既に制圧されている可能性もある。そうなったらどこか別の場所を探さねばならない。候補はそう多くは無かった。
確かな焦りが、ウィノグラードの脳を焼く。
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「こっちだ!前だけ向いてろ、とにかく走れ!!」
不思議だ、といつも思う。
彼の声には、人を鼓舞させる力がある。俯いた顔を上げさせる力が。地面に付いた手を握らせる力が。折れた心を奮い立たせる何かが。
百の声を操るジェリーとはまた違った魅力だ。彼にジェリーのような器用さは見当たらないし似合わないが、しかし彼の声はよく響く。ただ耳にではない、人々の心にだ。
「ちと様子見て来ようぜ、連中が来てたらマズイだろ」
「そうだな、バイアリー達のことも気になる。すまないがここを頼むよ」
信頼できる級友にこの場を託し、二人で校舎の方へ。東寮は構内で最も侵入し難い場所にある。限られた侵入路を塞いでしまえばいくらか防衛はできる筈だ。寮だから立て篭もるための必要最低限は揃っているし、中央ほど規模は大きくないが地下にシェルターもある。逃げ惑う学生達を東寮へ誘導しながら、所々煙を吐き出す校舎へと近付いていく。
と、校舎内から疎らな銃声が響いた。右隣からは小さな舌打ち。何と言っているかも判らない人々の叫び声が木霊する中、乾いた銃声だけがやけに明瞭に聞こえるのが忌々しい。実に無味乾燥なそれに、トリガーは怒りすら覚えた。
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最初に気が付いたのは彼らだった。
陽だまりの中でうとうととしていた二匹が、同じタイミングで頭を上げた。どうした、という意味を込めて首筋を撫でても反応しない。警戒している。何に?辺りを軽く見回してみたが、特に変わったことは見つからなかった。食堂のテラス席の外れ、今日は天気が良いからかいつもより若干人が多い。
もう一度何か異常は、と首を巡らせた時に、微かな違和感がそっと肌に触れた。随分と久々に感じたその感覚に一瞬背筋が凍りつく。それと同時に、どこか安堵している自分もいた。ああ、自分はまだ"こちら側"の人間であったのだと。
そこでふと、同居人の存在が頭を過った。午前の講義が早く終わって暇が出来たからと、自分達と入れ違いに寮へ戻って来た。それも両腕に一杯の食材を抱えて。夕飯に期待してろよ、と笑った彼は今、共同キッチンにでも立っているのだろうか。
4つの瞳が不安げに見上げてくる。一度思い出してしまえば、世話好きな友人の存在を忘れることは難しかった。
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いーかげん長くなりすぎたし時間かかり過ぎてるんでここまで。
本当は地下の部屋に籠ってるもう一人を引っ張り出して同盟締結!ってなるんだけどそこまで書く気力が無かった。
この歌が主題歌のアニメが学園モノなんで学園モノ。この歌のお陰で(自分の世界に)最高の同盟が爆誕しました本当にありがとうございます。
9:UNION(OxT)