話としてはそんなに長くないんだ。

本当は結構長く夢を見ていたと思うんだけど、

はっきり思い出せるのは、二人の男が出会った所からだ。

 

片方の地味な男は、絵描きだというのが判った。

スケッチブックにさらさらと人物画を描いていた、

彼の描く瞼の線がとてもきれいだと思った。

 

それを見て、絵を描くんだな、と声を掛けたもう一人の派手な男。

ビビッドなサングラスか眼鏡をかけていて、金持ちそうだなという印象。

どうやら彼は人気のある水泳選手らしい。

 

自分を絵に描いてくれないか、もちろん報酬は払うから、

と派手な男が頼むと、地味な男は快諾した。

派手な男の彼女がやってきて、二人の絵を描いて欲しそうにしていたので、

地味な男はそれを察して、にこやかに頷いた。

 

二人の絵を描き上げたらしい地味な男が、

派手な男に絵を見せようとする。

派手な男は、待ち詫びたとばかりに喜んでいる。

 

なぜだか、酷く嫌な予感がした。

 

やめろ。

見るな。

見たくない。

やめろ、やめろ、やめてくれ。

 

見るんじゃない。

 

頼むから――――――

 

 

女が悲鳴を上げた。

派手な男は、一目見るなり絵を投げ捨てた。

 

地味な男だけが、変わらず微笑んでいる。

 

 

まるでピカソの絵のような、大分抽象的に描かれたそれ。

けれど、「それ」は見て明らかだった。

 

二人の男女の顔が向かい合っている。

けれど、首から下が互いに別の身体になっている。

もっと言えば、首は胴体に繋がっていなかった。

 

それは、

向かい合った二人の男女が、

自らの首を捥ぎ取って、互いの身体に挿げ替えている絵だった。