カンカンカン。

ぞわ、と嫌な感覚が背筋に走った。

 

カンカンカン。

前には、黄色と黒の棒が通せんぼしている。

後ろを振り向いても、同じ二色の棒が通せんぼ。

 

カンカンカンカンカン。

二本の棒に囲まれて、囚われて。

余裕を失くした頭がくるくると空回りだす。

 

カンカンカンカンカンカンカンカンカン。

棒の向こう側に駅員らしき制服の人物が立っている。

困ったような顔で、こちらを見ている。

 

カンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカン。

遮断機の音が途切れることなく鳴り響いている。

 

なぜ自分は動くことができないのだろう。

なぜ駅員はこちらへ入って来ないのだろう。

 

きっと自分も彼も、同じような顔をしているに違いないのに。

 

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誰かと一緒にバスに乗っていた。

いや、一人だったかもしれない。

風景は全然違ったように見えたが、その場所は生まれ故郷だった。

ああ、ここに墓があるのだ、と思った。

祖父と祖母の眠る墓が。

そうしてバスがその土地を離れていくのに、

もうここへは帰ってこないことを理解して、

ぼろぼろと涙が溢れ出した。

あの時と同じように、窓の外をぼんやりと眺めながら、

ただ涙を流した。

何故こうも涙が止まらないのだろう。

墓なんて、ただの偶像でしかない。

縋りたい人はもういなくなった。

墓に眠る、なんて表現はただの喩えであって、

そこに誰も眠ってなんかいない。

そこにあるのは人だったもの。

もう人ではないもの。

だから、本来なら、わざわざ花を手向ける必要も無いのだ。

そこには誰もいない。自分は魂なんて信じてはいない。

それなのに、こんなにも墓石に縋りついて泣きたい自分がいる。

本当なら。

本当なら、そうしたかった。

祖父と祖母の骨が入っている墓に縋りついて、

ただただ涙を流したかった。

でもそれはおかしいのだ。

墓石の前で涙を流そうと、バスの中で涙を流そうと。

もういないその人を想って泣くのなら、両者は何ら変わりないハズだ。

だのに、何故こんなにも離れるのが惜しいのか。

なぜあの場所はそんなにも特別なのか。

 

――ああ、だから人は、郷愁を覚えるのか。

 

自分が失くしてしまいたかったもの。

頭で理解していても、心が嫌だとがなり立ててくる。

現実では心を黙らせることができるけれど、

夢の中ではそうもいかない。

 

だから、涙は止まらなかった。

 

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久々の夢オチ2連発は、ちょっと昏め。