目が覚めた。
視界は暗い。
けれども、月明りか、それとも明け方の光だろうか。
窓からの光のお陰で、真っ暗という訳ではなかった。
どうやら、風呂で寝落ちしてしまったらしい。
昔はよくやっていたけれど、ここ数年は一人暮らしで、シャワーで済ませてしまうこともあって、風呂で寝落ちすることはほぼ無くなった。
だから、しまったな、と思いつつ。
しかしまあ、慣れているのも事実。
寝落ちする前には点いていたはずの、風呂場の電気が消えているということは、
電球の方が切れたんだろう。
風呂の湯はまだ、そこまで冷めていない。朝という訳ではなさそうだ。
湯が風呂桶いっぱいまで張られているのに、違和感を覚える。
顎の下まで浸かりそうだ。
寝落ちする前には、もっと少なかったはずだけれど。
それはいいとして、とりあえずは上がって、電気を点けないと。
風呂場の扉を開けて、すぐ横にあるスイッチを手探りで探し出すと、案の定、スイッチは入ったままだった。
そのまま、少し身体と腕を伸ばして、脱衣所のスイッチを入れる。
(最近、実家の風呂に入る時は、脱衣所の電気を消して、風呂場の電気を点けている)
パチリ、と。
けれども、電気は点かなかった。
ん?
パチパチと、何度かスイッチを押す。
しかし、こちらも電気が点く気配はない。
ーーーーーおかしい。
気味の悪い違和感。
流石に、二つの電球が同時に切れるなんてことは、有り得ないだろう。
いや、確率的に決して無いとは言い切れないけれど、それでも、だ。
自分はそこで、絶対的な違和感を感じた。
ああ、
これは、夢か。
起きないと。
起きないと。
暗闇の中で、起きろ、起きろ、と頭を掻きむしる。
不気味な空間に、恐怖を覚える。
そう言えば、
自分は、風呂で寝ていたのではなかったか。
自分は、風呂を上がった?
上がった記憶が定かではない。
風呂に入っていた、それは憶えている。
けれども、それ以上のことが思い出せない。
今、現実の自分は、一体何処で寝ている??
さっきまで浸かっていた風呂を思い出す。
違和感。そうだ。もっと湯は少なかった。それははっきりと憶えているのだ。
なぜ、湯は風呂桶いっぱいに張られていたのだ?
風呂に浸かっている訳でもないのに、
ゴポリ、と水の音が聞こえた。
途端に息が苦しくなる。
さっき入っていた時はさほど温くなっていなかったのに、湯の温度がはっきりと二分されているのを感じた。今、ここにいる自分は、風呂に入っていないのに!
ということは、
現実の自分が、まさに今、風呂で寝落ちして、
この夢を見ながら、溺れかけているのでは?
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やばいやばい起きろ自分マジ起きろ!!!!!!!
と頑張ったら寝床の中で起きました。ちゃんと風呂上がってました。はい。
(現実で)起きたら、風呂上がりのこともちゃんと思い出せましたよ。
夢見てる間に記憶の整理をしている、とはよく聞きますが。
なんか、確かにそれっぽいなーって思う夢でしたね。絶賛、記憶の片付け中、みたいな。風呂上がりのことを思い出せない辺り、なんかそういう風に感じてしまった。
個人的に面白かったのは、湯の量が増えてた所で。
最初に(夢の中で)起きた時、真っ先に「あれ?」て気が付いた所。そこでおかしいな、とは一旦気が付いたのに、まあいいか、と脇にどけてしまって、その後で「そう言えば」と思い出す。明らかに気味悪い要素のはずなのに、最初は無視したのが何となく不思議。