車の後部座席に乗っていた。

 

知らない男性が運転している。

運転席と後部座席の間にややゆとりのある、バンタイプの車だった。

男性は前を向いているので顔は見えなかった。

 

行き先は……思い出せない。

ただ、目的地へ向かっていないらしいことは途中で気が付いた。

 

大分運転が荒い。

たぶん動物の死体があったんだろう、フロントガラス越しにちらりと見えたそれを避けるようにして、大きく車が傾いた。

速度を落とす気はないらしい。

たまに車道を外れたり、川に浸かったりした。

それで気が付いたのだ。

 

ああ、これは夢か、と。

こんな荒い運転で、無事でいられる筈はないのに。

自分は平然と後部座席に座っている。

 

車はどんどん山奥へと入っていく。

どうやら、目的地へは向かっていないらしい。

行き先も知らないのに、何故かそれが判るから不思議なものだ。

 

どこへ連れていくつもりなのか。

運転している男性は前を向いたまま、一言も喋らない。

 

不図、恐怖が湧いた。

 

起きなければ。

この車の向かう先が、何故だかとても恐ろしく感じた。

起きなければ。

起きなければ。

 

手元にスマホが落ちているのに気が付いた。

ホーム画面は実家の一室のようだった。畳の上に服が乱雑に置かれている。

何のアプリも表示されていなかったのが、一瞬ノイズが走ったかと思うと、デジタル時計が表示された。

 

 

21:23

 

 

何故だか、その数字が強烈に印象的だった。

何故だろう。

 

起きないと。

 

頭の中に、別の風景が混ざり始めた。

車外に見える木々の緑に、灰色の世界が上から静かに降ってくる。

 

頭の中の、どこかにいる私

 

夢から夢へ、夢から現へ