久し振りの夢オチ。
最近書いてなかった所為か、夢を覚えられなくなった。
それに危機感を覚えて最近思い出すようにしてるので、まだ書いてないのが何個かあるんだけど。まぁそれはきっとそのうち風化するだろう。
でも、今朝見た夢は記録に残しておきたかった。
あとは、書きたい気分になったから。
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取り残された、という認識だけは理解できた。
大きな校舎?みたいな建物にいた。
外は雪で閉ざされている。窓からは急峻な山々が遠くに見えた。
北からは、次々と人が送り込まれてくる。自分達を襲う存在だ。
窓から見ると、ぽつり、ぽつり、と人がこちらへ向かってきているのが見える。
彼方の山を越えた向こうから、殺しにやって来る。
南へは、どういう理由だか思い出せないが逃げられない。
自分達は、ここに籠城していた。
教室のような所には数十人の仲間達がいる。他の部屋もそうだ。
今の所、侵入まではされていない。向こうは少人数だし、それもぽつり、ぽつりと間隔を開けて来ている。
まだ不安は遠くにあるためか、皆和やかでリラックスした様子だった。
その雰囲気に安堵しつつ、様子を見に入口の方へ向かう。
廊下で何人かと擦れ違った。相変わらず窓の外は雪だ。
入口の近くまで行くと、銃声が間近で聞こえた。
丁度、襲撃者が到達した所だったらしい。
入口に三人、銃を持ち外へ向けて構えている。
その周りを固める者達も、やはり丸腰ではない。
ここだけは緊張感が張り詰めている。
ここが最初で最後の砦なのだ。
我々には武器が無い。ここを守る者が持つ程度しか無い。
だから、もしもここが突破されれば、
あとはただ蹂躙されるのみ。
入口のすぐ外に、襲撃者達が斃れていた。
まだ次が来る。その次も少し遠くに見えている。
今日も、いつもと変わらない光景。
一体、いつになったらこの襲撃は終わるのだろう。
いつもと変わらない様子に少しがっかりしながら、踵を返した。
入口から少し離れた所で、どよめきが聞こえた。
振り返ると、入口を守っていた三人が血を流して倒れている。
周りの武装した仲間達が銃を向けている。
その先にいる侵入者と、一瞬
目が合った。
背筋が凍り付いた。
やばい、やばい、やばいやばいやばいやばいやばいやばい
仲間がまた一人倒れ、二人目の侵入者が入ってくる前に駆け出した。
やばい、やばい
それしか考えられない、思考ができない
来る、奴らが来る
想像するだに恐ろしい、
そこら中が血塗れになった世界を
息を切らせて、仲間達のいる部屋に戻ってきた。
しかし何を言えばいい?どうすればいい?
もう奴らは入ってきている。何をすればいい
どこにも逃げ場はない。見る限り、隠れる場所もない。
「落ち着いて、できるだけ、静かにして。奴らが、…入ってきてる」
パニックにならなかったのは奇跡だと思う。
皆、呆気に取られたのかもしれない。
相変わらず自分の頭は働かない。
少しふらふらしながら教室に入った。
どうすればいい、何をすればいい、どこへ行けばいい??
どうすれば助かる?今から全員を入口から遠い方へ誘導するか?しかしどうせこの建物からは逃げられない。逃げ惑い、殺されるだけだ。全員が隠れられるようなスペースなどない。
ただ、殺されるのを待つだけだ。
最初から解っていた。入口が突破されれば、後は蹂躙されるだけだと。
すぐ近くの廊下から悲鳴が上がった。どうやらここまでやって来たようだ。
廊下に侵入者の姿が見えた。何人かがしがみついてどうにか止めようとしている。血を流し、恐らくはしがみついたまま、既に死体となりつつある仲間もいる。
教室にいた仲間達も悲鳴を上げ、廊下を反対方向へ逃げ出す者や、なるべく廊下から離れて教室の奥へ逃げ込む者もいた。大多数は後者だ。
パン、と銃声が響き、しがみついていた仲間の一人が床へ斃れた。
また悲鳴が上がる。
自分も廊下から離れ、教室の奥で身体を震わせていた。
怖い、
殺される、恐怖。
でも、誰かが行かないと、
誰かが。
廊下の奥から走って来た仲間が一人、侵入者へ体当たりを食らわせた。
そのまましがみつき、何とか抑え込もうとしている。
もう一人も駆け付けた。相手の動きが鈍る。
銃声が響く。
また一人、床へ斃れる。
その光景を、震えながら見ていた。
…少しでも、相手の動きを抑えられれば。
武器は持っていなくても、人数で勝てるかもしれない。
少しでも抑え込めれば、可能性が出てくる。期待が持てる。
誰かが、行かないと。
ここで止められれば、皆は助かるかもしれない。
でも、そのためには、今、誰かが行かないといけないんだ、
誰かって、誰だ。
(お前が、行けよ!!!!!!)
ガッと目を見開き、歯を食いしばって飛び出した。
勢いのまま侵入者に体当たりし、少しよろめいた所で、両手を回してギュッとしがみついた。同じくしがみついている仲間達の腕はまだ温かい。
侵入者の手元にある銃口を身体で塞いだ。
撃ってみろ、
お前の銃に残り何発あるかなんて知らない。
でも、自分を貫通するなら、少しは威力が落ちるハズ。
この腕は死んでも離さない、絶対に
あとは、きっと仲間達が何とかしてくれる
次の瞬間、腹部に熱を感じた。
どうやら撃たれたらしい。目を閉じた。
しがみつく腕にますます力を込めながら、どこか安堵している自分がいた。
ーーーああ、よかった
ちゃんと飛び出せた。勇気を持って。
いつもの自分は、こういう時に飛び出せず震えているだけなんだ。
行かなきゃ、行かなきゃと思っていても、
恐怖に負けて動けないんだ。
よかった…
*****
目を開けると、廊下に出ていたハズが、教室の中に戻っていた。
教室内の人はまばらだ。でも知った顔が何人かいて、どうやら自分に声を掛けてくれていたらしい。
ああ、皆助かったんだなと思った。
それで、南へ逃げることができるようになったらしく、皆外で待っているという話だった。
ようやくここから離れることができる!
外へ出ると、雪が止んで雲の隙間から青空が顔を覗かせていた。
あちこちでグループができていて、南への出発待ちをしているらしかった。
その一つの前を通りかかった所で、まとめ役と思しき人に声を掛けられた。
「君、○○の後輩じゃないか?」
「そうですが…先輩、無事なんですか?!」
「○○じゃん!良かった!生きてた!!」
先輩の顔を見た途端、安堵からか涙が溢れた。
情けなく泣きながら、お互いが生きていることを喜び合った。
見上げると、そのグループの旗?だろうか。移動の間の目印にするためのものだったのかもしれない。青空と同色の大きな布地が風に靡いていた。
そこには大きくこう書かれていた。
『Make A Difference』