「Bad.」

彼ははっきりそう言った。
それを聞いて、すぐに取り繕うとする自分がほとほと嫌になった。

こっちだって同じだよ、
でも君はそれを理解してくれない、
こちらは伝えられない。
お互い、嫌なもんだ。本当に。

そうこうする内に彼はどこかへ行ってしまい、
彼の知人に聞いても行先は分からない。

ここは、どこだっけ。

知り合いは近くにも何人かいる。
一緒に行かないといけないのに、本当に厄介だな…
だから集団行動ってのは嫌いなんだ。

すると、天井から何かが降り始めた。

いい、匂い。
霧雨のように降ってくる。
デオドランドのような匂いだ。

いい匂いだけど、
自分には苦手な匂いだ。
なにより、強烈すぎて。

苦手なんだよ、
電車の中の、女性の香水。
ふわっと香る程度ならいいのに、どギツイ人は本当にキツイ。

匂いが辺りに過剰に立ち込めて、目に見えるんじゃないかと思えてくる。
気分が悪くなってきた。
やめてくれ、
気持ちが悪い。

吐きそうになって、実際吐いた。
まだ匂いの雨は降り続いている。

知人の一人が止めろとクレームを入れていた。
けれど、これが規則なのでと淡白なアナウンスが流れるだけ。

「ふざけんなよ!」

知人が怒っている。それは有難い。すぐにでも止めて欲しい。
けれど、暴力的な言葉は嫌なのだ。

ああ嫌だ、彼は怒っている。
今は有難いけれど、できればそういう言葉は聴きたくない。
ますます気分が悪くなる。
嫌な、
嫌な気分だ。


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そして、嫌な夢だ。