雪が深々と降り積もっている。


世界は薄暗かった。
見上げると、灰色の空から絶えず細かな雪が降ってくる。

静かだ。
どうして、雪が降ると世界はこうも静かなのだろう。
とても静かだ。
とても。

静かな世界の中に、自分は一人立ち尽くしている。
ただ雪が降っている。
音は無い。


目の前には、仕事先の建物がひっそりと佇んでいる。
雪に覆われた灰色の世界の中で、人々に忘れ去られてしまったかのように。
密やかに。

ゆっくりと、歩き始めた。

深く積もった雪に、一歩踏み出す毎に膝の手前まで脚が埋まる。
注意しながら進んでいくと、近くの建物の壁ガラスに自分の姿が映った。

違う。
ガラスに映っているのではない。
ガラスの向こう、屋内にもう一人の自分の姿が見える。
その姿はうっすら透けていて、雪に足をとられて転倒しているらしかった。


ああ、
と気が付く。

これは、夢か。


明日明後日と、雪が降ると言っていた。
予報を聞く限り、とても仕事へ行けるような量ではないと。

だから、それをシュミレートでもしているんだろう。
事前予習みたいなものか。
より深く雪の積もっているそこを避けて、先へ進んだ。

もう少し歩くと、建物の扉の前で立ち尽くす自分がいた。
やはりその姿は少し透けていて、その向こうが見える。
その扉は開かないのだろう。

別の扉の方へ足を向けた。

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明日から雪じゃーとか言われてたらその夜の夢オチは雪が降った時に仕事場へ如何にして辿り着くかっていうシュミレーションをやってる訳だよ!全く自分の脳は判り易いな!

でも、夢の中の銀世界は綺麗だったなー。
綺麗、と言うか、一面真っ白でキラキラしてて綺麗、っていう訳ではないんだ。
世界は薄暗くて、その中でしんしん雪が降っていて、空には月も無い星も無い、ただただ一人ぽっちで、夜なのか朝なのかも判らない中で立ち尽くしている。
世間一般の感想としては、綺麗と言うより、不気味っていう表現の方が近いんだと思う。

けど、その不気味さも含めて、自分には綺麗だと思った。
大分前に、スキーのゲレンデで落下していくバスを見送った夢、あの時の空の雰囲気に近い気がする。
自分の中の銀世界のイメージはあれで固定されてるんだろうか。

実際はこの後も何度か失敗してる自分に遭遇して、ようやく建物の中に入ったらコートを作ろうとか言われてサイズいくつ?って訊かれてコート作るのに必要なサイズが解らんくて恥をかくみたいな内容でしたが、そっちはほぼ忘れてしまったので割愛。