きっと、同じ夢を二回見たんだと思う。
一度目は行き着けなかった。
二度目は行き着いた。

時には車で、時には自転車で、
私は遠くへ向かっていた。

行って行って行き着く先、

安寧と恐怖の眠る、密やかな場所へ。

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さっきからずっと、壊れた自転車で緩やかな坂道を下っている。
何処かの田舎道のような、舗装もされていない道。
剥き出しの地面を走っている。

やがて川が現れた。
堰のような滑らかな岩場を、透明な水が滑っていく。
流れる水面にキラキラと反射する陽光が殊更に眩しくて、美しかった。
道は川に沿って折れ、見渡す限り緑の草原へと続いていた。

穏やかな川の流れのように、穏やかな世界だった。
柔らかな風が吹いている。
心地良い風が。
風に揺られて、緑の波が広がっていく。

全てが優しかった。
泣きたくなるほどに。

静かだ。
誰もいない。
何もいない。

草原の海の中に、緑色の人型のモニュメントが立っていた。
木で出来ているんだろうか?
それは巨大だった。
それはただそこに立っていて、ただ存在感を与えていた。


やがて川は途切れ、人工物が現れる。

行き着いた。
行き着く場所へと。

ここを、目指していた。


戦わなくてはならない。
そのために、ここまで来た。

支配を終わらせるために。
全ての支配から解放されるために。
全ての人々を、見えない糸から切り離すために。


それは幸せなことなんだろうか?


そんなことは知らない。

ここには安寧がある。
平穏がある。
優しい風に吹かれ、穏やかに緑を揺らす草原がある。

泣きたくなるほどに、
涙が出るほどに。



楽園、と言ってもいいのかも知れなかった。