どこかで見たことがあるんだ。
けれど、それがどうしても思い出せない。
ネットで適当に表現を打ち込んで検索しても出て来ない。

緑の多い世界。それも深い緑色。
巨大な森。
陶器のような白いなにか。ツルツルしてる。
植物として描かれているけど、造形は現実のそれと違う。
密やかな、幻想的な世界だ。

どこかで、その絵を見たんだ。
何て言う芸術家が描いた絵なのかも知らないけど、自分が好きな世界だなと思ったから、きっと頭の引き出しの何処かから引っ張り出されてきたんだろう。
そうでなけりゃ、夢に出て来ない。
ましてや、夢を見ている自分が「ああ、あの世界だ」なんて思い出すこともない。


そう、自分は「思い出した」んだ。
あの世界を、夢で再構築したんだなって。
ベースがあの世界になってるだけで、色々と自分の要素が足されていた。

世界は水で満たされてた。
暗くて巨大な森、所々に生える白い何か、それらをすっぽり覆う透明な水。
その中で、人々は戦争をしていた。
彼らが人なのかどうかは知らないが、とりあえず人の形はしてた。
水の中で生きてたから、たぶん肺呼吸しなくても生きていけるんだろうけど。

自分の目線は、ある一人の男の子だった。
少年と言っていいような幼い子供。
大きな魚に乗って、仲間達と一緒に何かを追いかけている。

視線の先には、緑色の少女。
緑色、っていうのは、髪とか目の色の話じゃない。
全身が緑色だ。髪の毛も、肌の色も、服も、頭から爪先まで、全てが同じ緑色。
ペイントソフトで塗り潰されたような感じだ。
周囲の緑に同化しそうな深緑色の少女は、魚にも乗っていないし泳いでいる風でもないのに、少年達を遥かに上回る速度で水の中を進んでいく。
彼女を捕まえないといけないらしいが、とてもじゃないが追いつけない。

辺りには戦争の匂いが立ち込めている。
水面の方で、巨大な人の形をした何かが斃されていた。
誰かが高らかに宣言する。

「神よ。貴様は、貴様の道具でもって斃されるのだ!!」

神は死んだのか。
少年の仲間達の気勢が上がる。
彼らの敵は一体何だ?彼らは神と戦っているのか?

緑色の少女が世界の真ん中へ到達する。
逃げている間も、彼女はこちらをじっと見つめていた。

悲しげな目をして。