確かめてみようと思ったのだと、そんな感覚の残滓が残っている。

ごつごつとした大小の石ばかりの川だった。
水の流れはやや早く、白い飛沫があちらこちらに見えた。
足がつくので落ち着いていられたが、子供には危険な流れだ。
自分は何かに掴まっていて、川の中を移動しようとしていた。

それが、ふとした瞬間に足をとられた。

身体が浮く。
足をつこうとしたが、やや深い。
爪先が川底の岩肌を掠った。
少し流されて、もう片方の足で今度は踏みしめる。

だが流れが早い。

水流の勢いで大きく傾いだ身体を、片足で支えることは不可能だった。
また足が離れる。
どんどん流される。
泳いだが一向に進まない。
流れに逆らうことができない。

少し離れた所で、母がこちらを見ていた。
次第に表情が焦っていくのが見て取れた。
あんたなにしてんの、
そう言われたような気がしたが、最早水の音で何も聞こえない。


———―――だめだ。

流される。

逆らえない。



川の先には滝がある。
知っている。
ついさっき見てきたばかりだ。

既に足はつかない深さになっていた。
視界はやや濁った水の色。
既に諦めた。
川で溺れて死ぬというのはこういうものか、と思った。

滝から落ちるのか、とぼんやり考える。
確か、二段構造の人工滝だった。滝というよりか、ダムのようにコンクリートで固められた堰のようなものがあるだけだ。
高低差は100mくらいだったろうか。
そのやや上方寄りに一段あり、そこから更に落ちて滝壺になる。

落ちる。
流れが変わる。
下へ。


あっという間に一段落ちた。
少しそこへ留まった後、流れのままに更に落ちる。

今度は高い。
着水するまでに少し間があった。
風を感じた。


ああ、これで死ぬのだと思った。




ザブン、と勢いのままに滝壺へ沈んだ。
相当な深さがある。
川底に全身を打ち付けて死ぬのは痛そうだな、という心配は杞憂に終わった。

ただ、もう水面に上がることはできないだろう。
見上げた水面はあまりに遠かった。
もう息ももたない。

周囲の色が次第に暗くなっていく。
底へ沈んでいく。


『もしこれが本当に水の中なら、』


苦しい。
昔から、息を止めるのは嫌いだった。


『こんな風に息を吸い込むこともできないね』


息を、


口を開いた。


『……』


口を開けた所で、水を飲むだけ

空気が欲しい

苦しい




『よかったね、これが夢で』




―――目を開けて、息を吸った。


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感覚ってスゲー。と思った夢オチ。
最後の方は現実の自分が出てきていて、これが夢だと認識してたみたいですが。
沈んでる時、ここで吸っても意味は無いと思っていても苦しさから吸い込んでしまう。結果的に水を飲むことになる。多分、昔風呂かなんかでどこまで息を止められるか遊んでた時の、吸いたくても吸えないってな状況の記憶を引っ張り出してきたんでしょうな。
相変わらず自分が死にそうな夢ばかり見ている今日この頃。

特に最近、夢の中の行動と自分の動きが同調してることが多くて、こないだなんかはラボの机で突っ伏して寝てたらドッジボールする夢を見て、夢の中でボールを投げた瞬間に現実の自分の腕も動かしてたらしくて「ガン!」ってPC殴った音で起きた(終わってる