今朝の4:00頃だったかな。
ああ、面白い夢を見ているな、と思っていたんだよ。面白い夢だからそのまま続きを見ていたかったんだけど、今僕が寝ている枕のすぐそばには作業中のノートパソコンが開いたまま、真っ暗な画面でスリープモードになっているんだろうなっていうことくらいは想像できた。つい2時間くらい前にもちょっと起きて、それを見たからね。さすがにそれくらいは覚えている。
そう、僕は月曜の朝が来る前に仕上げておかなきゃいけない書類があって、それを作っていたまま眠ってしまったんだ。まあ寝床でやるなっていう話なんだけど、どうにも眠気に勝てなくてね。

だから、ああ、起きなければいけないな、と思ったんだ。
そろそろ夢の世界を切り上げて、目を覚まさないといけない。
でも、正直な所、判らないな。自然と夢の終わりが近付いたのが先なのか、自分が起きようと思ったのが先なのか。起きようと思ったから夢が終わったのか、夢が終わるから起きたのか。
どっちでも構いはしないんだ。面白い夢であったことに変わりはないのだから。

だから、今朝見た夢の話をしよう。
最近、こればっかりになっているけどね。


僕が今朝見た夢の話をとても面白いと思ったのは、―――夢の中で、夢の話を聞かせていたからだ。
夢の中で起きたことを、実は夢の中の僕は知っていた。それを人に話して聞かせていたんだ。
その夢を、現実の僕がまたこうして話している。ね、何だか可笑しいでしょう。
だから、今日はこんなヘンテコな口調にしてみたんだ。
折角だし、偶にはこんな風に遊んでみるのもいいかと思ってね。

残念ながら、夢の中の夢の話はあまり楽しい話じゃなかった。
まず、夢の中の僕は大きな大きな建物の中に居た。天井がとても高くて、階段状に机と椅子が並んでいて―――大学の大教室のようだった。但し、壁も天井も床も机も椅子も、全て木造だったけどね。
屋根の一面がステンドグラスになっていて、大きな教会のようでもあった。建物全体は暗かったけれど、ステンドグラスから差し込む色鮮やかな光が美しかったよ。
僕はその階段状に並んだ机と椅子の、丁度真ん中辺りに立っていたんだ。
そこから少し上がった所の椅子に、一人の女の子が座っていた。さらさらの黒髪の女の子だった。知らない顔だったね。…というのは、矛盾してるかな。まあ、現実では見覚えのない人だった、っていうこと。

その彼女、劇物らしい液体を飲んで死んでしまうんだ。
化合物の名前までははっきり思い出せないけど…やけにCが多かった気がするなあ。だから、多分有機化合物なんだろうね。夢の中では、ちょっと黄色味がかった、トロッとした液体だった。
それを僕も飲んでしまうんだけど、僕は解毒剤のようなものを飲んで助かるんだ。
イヤ、本当は助かるかどうか判らない、っていう状態なんだけど、僕は助かることを「知ってた」から、大丈夫だと思ったんだ。だって、その前に見た夢の中で僕は助かったんだもの。
つまりは、夢の中の僕が見た夢が正夢になった、っていう夢を見たんだ。

その建物の中には他の人も数人居て、ひとまず僕の様子を見るために別の部屋へ移ったんだ。
和風な雰囲気の部屋だった。そこも全部木造。
畳があって、真ん中に低い机があって。四方が雪見障子で囲まれていて、外は水族館のように魚が泳いでいるんだ。まるで、海の中にその部屋があるみたいにね。

そこで、僕は一緒に居た人に夢の話をするんだ。
天井の高い木造の建物、ステンドグラスの色鮮やかな光、長い黒髪の女の子…彼女は死んでしまう。けど、僕は解毒剤を飲んで助かるんだ。そういう夢だったんだよ、と。だからこそ、あの解毒剤を迷わず飲んだ。僕は助かるということを知っていたんだ。

本当に、いつもここに書いているみたいに説明してるんだ。
何だろう、あの感覚。ちょっと違うな、確かこうだった。どう表現したらいいんだろう…なんて。そんな風にあれやこれやと夢の内容を思い出しながら話している。
この辺りで、もう身体は起き始めていたんだろうね。寝ている僕の意識が、どこか遠くの奥底からじわりじわりと昇ってくる。


へえ 面白い夢だな

めずらしい 夢を 見ている









―――そうして、目が覚めたんだ。