ちょっと前のことになりますが、久し振りに映画を観てみた。

髪を切りに行った時、店で読んだ雑誌にこの映画の記事が載っていて、へえ、と興味が湧いたので帰りに地元のTSUTAYA寄ったら丁度新作でDVDが出てたんで、そのままお持ち帰り。

『ぼくのエリ 200歳の少女』っていうタイトルだったかな。

ヴァンパイアの少女と、人間の少年の話。記事に載ってた写真の2人に何となく惹かれた。

映画なんて滅多に観ない、というか最近は観たくない方向に偏ってきてる人間だけども、珍しく観てみるかな、という感覚にさせてくれた。


そんな訳で、以下ネタバレ含む感想。

あ、結構酷い描写とかそのまま書いてるんで、そういうのが苦手な人も読まないことをオススメ。





記事を読みながら、静かそうな映画だな、と思った。

舞台はノルウェー?スウェーデンだったかな。とりあえず北欧系だと思われる。映画を紹介していた記事の中にも銀世界の写真がいくつかあって、とかく音が少なそうな印象を受けた。多分、だから観ようと思ったんだろうな。その時は、きっと静かな世界が欲しかったんだ。


映画を観て、その印象は間違ってはいないけど、全部合ってる訳でもないのが分かった。

最初から終わりまで静のままで終わるかと思っていたけど、随所に動があった。凍えるような静謐の中に、荒々しい血みどろの残酷さがある。ギャップが激しいから尚更、動が際立つ。

丁度、白い雪を染める赤い血のように鮮烈な。

まあ、テーマが吸血鬼なんだから、不自然ではない。


説明下手な自分が大筋を説明すると、虐められっ子の12歳の少年が暮らすアパートの隣に外見ずっと12歳の吸血鬼の少女が父親らしき人物と共に越してきて、夜の公園で友達になり、彼女になり、別れたかと思いきややっぱり一緒になるという話。

…単純にストーリィを説明すると、そうだよな。そうなるよな。ただ、諸々を端折り過ぎな気がしなくもないが。


但し、彼女、エリは吸血鬼なんで、人間の血を飲まないと生きていけない。それ以外は受けつけない。あ、あと太陽の光を浴びると燃える。

そんな訳で、彼女は夜しか家から出て来ないし、作品の各所に散りばめられた彼女の食事シーンが凄惨な光景になる訳だ。


父親らしき人物(名前忘れた、ていうか名前出たか?)が彼女の為に血を集めてくる担当なんだけども、それが失敗してしまうんだな。で、彼女が血に飢えて自ら狩りに行ったと。

その殺人事件が最後までネックになってくる訳で。

まあそっちの本筋の方は自分的にどうでもいいんだ、気になったのは他の諸々だからな。



自分が思ったのは、エリは200歳にしては幼いな、ということ。

つか、彼女は映画の中で200歳って言ったか?「ずっと12歳だ」ってなことを言っていただけのような。

まあそれはいいとして、それでも歳経ていることは確実だけども、それにしては大分幼いような気がする。思考とか言動とか、とかく全体的に?

それが12歳であり続ける為の演技なのか、そうしていたいという願望なのか、自然とそうなっているのか。

そもそも、エリはヴァンパイアにされたのか、元々そうなのか。(ヴァンパイアに噛まれて生き延びた人間はヴァンパイア化するらしい)


もう一つは、彼女の父親、というか保護者的存在な爺さんの立ち位置。

爺さんの彼女への絶対的な献身は、一体何処から来るものなのかが分からない。彼女を守る為に顔を酸で溶かし、自ら血を与えて、死ぬ。何だってそこまでする、と感じずにはいられない。


最後にオスカー(主人公)と一緒になることが分かった時、爺さんは元々、オスカーのような立場だったんじゃないのかな、と思った。エリに恋した少年、みたいな。まあ、最初は爺さんもヴァンパイアかと思ってたけど。

でも、エリのオスカーと爺さんに対する態度は明らかに違う。と、自分は思った。

いや、爺さんが可哀想だったんだな。文字通り全てをエリに捧げたのに、エリは何も言わないから。

勿論、爺さんも何かを望んでた訳じゃないだろうけど。ただ、7階から地面に落っこちていく爺さんの死体を見るのは辛かったような気がするんだ。


こちらは人間だから、そう思ってしまうのは自然ではないのかな。

そう考えると、やっぱりエリはどこまでも異質というか、違和感なんだ。

でも美しいんだ。



オスカーとエリが一緒になった後で、どういう関係になっていくかは想像出来ない。

オスカーが血を集めるのか、それともエリが自分から食事に行くのか。エリはあんましオスカーには見せたくないみたいだったし、そこまでオスカーに依存するとも思えないけど、お互いの距離が近まったならそういう自分の弱さも露呈していくかもしれない。


疑問はいくらでも出てくる。理解力に乏しいだけかもしれないが…

台詞自体が少ないから、謎が多くて消化不良な気がするけど、それも何かのメッセージなんだろうか。



あと一つ、とても印象に残ったやりとりが映画の中にあった。

オスカーとエリの会話だけど、オスカーが告白するシーンになるのかな。その前にも「好きだ」とは言ってたが。

「僕と付き合ってくれる?」というオスカーの言葉に、エリが返事を渋るんだ。


「付き合うと、何か変わるの?」っていう疑問を口にしたエリに、オスカーは「何も変わらないよ」と応える。

その答えが、堪らなく嬉しかった。


「何も変わらない?」

「うん」

「…じゃあ、付き合う」

「ホント?」

「うん」

「…よかった」


何かが変わることを、自分はとても恐れている。

見えない境界線が引かれてしまうことを、何よりも恐れている。


少しだけ、安心出来たような気がするんだ。