昨日はバレンタインデーでしたね。恐らく一日当たりのチョコ消費量が年間通して最も多い日なんだろうな。

自分はこういうイベント事は割と好きなので(ミーハーだから)、Yラボにチョコを持って行きました。

お部屋にはフランスのお菓子も置かれていました。ま、まじぱん?と言うらしい。自分としては「普通」より「やや嫌い」な方に偏っているような気がするお菓子でした。緑色の。



そんでもって、長年の習慣に終止符を打った日でもありました。

いつから始めたのか憶えていないくらい、長くやってきたことでした。幼馴染にチョコをあげるという行為は。

昨日で最後にしました。もう、来年からは渡すことはない。

2人の間で、この日が特別になることはない。


最後だってのに、Yラボから帰る頃になって幼馴染へのチョコを買っていないことを思い出し、慌てて帰宅途中で購入。最後の最後でこれかよ、と自分に苦笑せざるを得なかった。

しかも雪でどの路線も遅れる遅れる。ホワイト・バレンタインなんて誰が望んだよコラ、と誰にともなく八つ当たりしてみた。


いつも通り、インタホンの壊れた家の門扉の前に立って、携帯の番号をコールする。


「着いたよ。遅くなった、ごめん」

『分かった、今行く』


似たような遣り取りを、何度繰り返したことか。


白い雪が、夜更けの闇の中に無音で降り積もっていく。

右手で持った傘の重みだけが増していく。

やがて玄関に柔らかな色の明かりが灯り、ガタガタと物音がしてから扉が開いた。


「やあ」

「やあ」


小さい頃からずっと、自分の方が身長が大きいのを、もしかしたら嫌だったかも知れない。

もうずっと昔、チビ、と言われて不機嫌な声を出していたのを思い出す。温厚な性格で、怒った顔を見るのは珍しかった。

それでも、高校に入ってから、伸びたな、と驚いた記憶がある。

残念ながら、自分の背を越えることは出来なかったようだが…。


向こうは公文式、こっちは毎日の学習。塾と通信教育、テストではよく競った。一方的に。

向こうの方がいつも一歩上だったと思う。

懐かしい。



全くいつも通り。

ただ、渡す時に添える言葉がいつもと違っただけだ。



「これまで随分長い間、受け取ってくれてありがとう」



これが、自分と君との、最後のバレンタイン。

お互い義理だと分かりきっていて、何の気兼ねもなく渡せるプレゼント。


「じゃあ、また一ヶ月後に」と言った幼馴染は、全く以て律儀だと思う。