選択があった。私はここへ、戦場へ来る道を選んだ。
拒否することも出来た、しかし行かなければならない気がした。
そして、我々は勝利したのだ。
脱力しきっていた。手も足も、力が入らない。
心の何処かで、これで終わったのか?と誰にともなく疑問を投げ掛けていた。
―――終わったのだ。これで、終わったのだ。
自分に納得させるように、暗示のように繰り返した。
そう、戦争は終わったのだ。我々が、我々の仲間が勝利を収めたのだ。
とてつもなく大きな虚無感に襲われていた。身体が脱け殻のようだ。
身体が、軽い。臓器も肉も皮膚も鄙びてしまったのではないかと思う程だ。
死の恐怖から解放された所為だろうか。自由を勝ち取った喜びからであろうか。
否、決して心から喜んではいない。
多くの仲間の死があった。
それ以上に、敵の兵の死があった。
どちらにせよ、同類である人間が大量に死んだのには変わりない。
―――勝利とは、このようなものか。
心は晴れやかであるようで、何とも虚しいものだ。
確かに、胸は安堵に包まれている。見上げた青空のように穏やかで、何の不安も無く広がっている。
その一方で、後ろめたさがある。この勝利を素直に受け入れて良いのか。本当に終わったのか?
海岸に寄せる波の底は青黒く、何かを無言で語っているかのようだ。
終わったのだ。
もう一度、自分に言い聞かせた。
ほうら、目を上げれば、向こうから仲間達がやって来るではないか。
共に戦場を生き抜いた、頼もしい仲間達。皆、傷付き、疲弊しきってはいるが、その精悍な顔には乗り越えたという満足感と、隠しようのない喜びが溢れている。
一人、また一人、近付いてくる仲間と、目で頷きあった。抱えられている者も居た。
最早言葉も要らなかった。相手と視線を重ねるだけで―――それだけで、十分に通ずるものがあった。
―――生き延びたな。
―――お前のお陰だ。
―――終わったのか。
―――終わったんだ。
―――よくやった。
―――ありがとう。
皆が行ってしまった後で、海を振り返った。海岸には、まだ何人もの兵士が残っていた。
陽光を受けて、海面がエメラルドグリーンに輝いている。美しい光景であった。
その海の底に、一体何人の仲間が沈んでいることだろう。
何人の敵の兵士が沈んだことだろう。
海岸に残っていた兵士は、沈んでいった者達への祈りを捧げているのだった。
深い、海…
引き寄せられるように、そちらへ足が向いた。疲労の為か、足元がふらついた。
目の前に海がある。
この海原に沈む仲間を想い、目を閉じた。
ぐらりと闇の中で身体が傾いたのを感じ、水しぶきが上がる音を耳で聴いた。
水の感触が全身を包み込んだ。うっすらと目を開いたが、水色にぼやけていてよく見えない。
手足は重い鉛のようで、全く動かすことが出来なかった。
もがく気力さえも残っていない。海に放り出された人形のような心地だった。
―――…
―――ここで、死ぬのか。
そうか…
最早、恐怖も無かった。感覚が麻痺していたのかもしれない。
再び目を閉じ、闇の中で海に身を委ねた。
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戦争関係の夢は偶に見ますが、今回のはリアリティがあった気が。
緊張感から解放された感じといい、映像といい。戦争映画は好きではないが、映画の影響だろうなあ。
何か↑だと死ぬ感じですが、この後戦地の近くに住んでた住民(♀)に蹴りでもって救出され、「あんたしっかりしんさいよ!」ばりに叱咤され、じゃあ戦争も終わったし家へ帰ろうということで山を下り(地形が意味不明だが、山の上に高原のような平地があってそこが戦場でそこに海もあった)、途中で白熊と黒熊の喧嘩を見て、船の出る時刻を確認する所で一応終了。(何だそれ
区切りが良いので(あと話的に意味不明になるので)ここで終わりにしました。