黒い空から紫色の液体が垂れてきて、地面に落ちたら草が生えた。
暗い雲の間から三日月が顔を出したら、花を咲かせて笑うんだ。
お月様の光で蜘蛛が蝶になって、近くの雲はうっすら白んで、ドロリと混凝土が溶け出してタマゴが出てくる。
蝶はひらひら飛んでった。暗い世界を飛んでいった。
空には緑色の星が瞬いてる。
一番大きな赤い星が輝いたら、タマゴはぱきりと割れてしまった。
透明な卵白が流れ出して、そこら中の土をかびさせる。
それを見ていた天道虫は、空を見上げて涙の粒を一粒こぼした。
緑色の星はそれに応えた、白い風が吹いて辺りは一瞬にして明るくなった。
燦燦と光が降り注ぐ、まるで真昼のよう。
けれど、青い空にあるのはお天道様ではなくてお月様のまま。
光で出来た古い樹の影から天使が生まれて、森の中へ消えていった。
水は死んだ。土は腐った。透明な石は全てを見届けて砕け散った。
その欠片が水面を揺らして、岸辺に立つ女神様を驚かせる。
天使は喜んだ。
空は相変わらず、卑しい地面を見下ろして笑ってた。
そしたら地面も声を張り上げた。
「空はもっと汚れている。空は星の墓場だ」と。
空は怒って焼け焦げて落ちた。地面は爛れて悲鳴を上げた。
そうして、全ての生き物はいなくなった。
後にはただ、時間だけが残ったとさ。
女神様と天使は、それをじいと御覧になっていた。
やがて2人手を繋いで、湖の向こうへ行ってしまった。
この世界はこうして、もう何度目になるかわからない眠りについた。
またひとつ、星が涙を流した。
今度起きる時には、平和な世界が現れることを願って。