仏って何で、仏というんだろうか。わが国では、例えば時代劇などで死人が川に浮かんでいると、「あっ、仏が浮かんでいる」と言う。この意味は死人、死体である。先祖の命日に、仏様にお線香あげなさい、というのは亡くなったご先祖様や先祖の霊に対してお線香をあげる意味と了解している。
「いつから『仏』を『ほとけ』と読むようになったのか、どうして『ほとけ』と読むのか、これに答えられるたしかな資料も、はっきりした説明も現在のとことありません。研究者の間でも定説がありません。いろいろ説はありますが、ある考えを紹介しましょう。buddhaの発音をそのまま漢字にしたことばに仏陀のほかに浮図(ふと)・浮屠(ふと)の『ふと』、あるいは『ぶと』の読みを『仏』に当てて使っているうちに、いつの間にか「ほとけ」と訛り、読み習わされるようになったとも考えられます。そしてこの『ほとけ』が、わが国では「死んでほとけになること』『死ぬこと』などの意味で一般に使われるようになりました。つまり、『ほとけ』は『死んだ人』というイメージをもつことばとして定着しています。(田上太秀〈2000〉『人間ブッダ』(第三文明社、レグルス文庫)p12)
もともとは死人の意味はなかったのに10世紀ごろの後撰和歌集などに死人の意味で使われたようだ。それが今日、当たり前のように死んだ人として定着してしまっている。しかし、本来の意味で正しく使うことが大事である。正しい意味で使用することによって、激闘の末、仏教を打ち立てた先人の苦労が少しずつわかってくるのである。