目の前にいる人を大切に | ノートさんのブログ

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3-5 目の前の一人を大切にした

★注目すべき日蓮の国家観

日蓮の遺文の1つは、国や社会に向けて論陣を張った文章であり、もう1つは、門下にあてたお手紙である。前者は舌鋒鋭く論を展開し、後者は優しく、穏やかな文章である。前者の代表が「立正安国論」であり、後者は日常の様々なことに悩み苦しむ門下にあてた御消息文である。佐藤弘夫(2005)「日蓮が安国という場合の『国』も、支配秩序頂点に立つ権力者を第一義とするのではなく、人々とその居住する空間を意味する」(p111)、「日蓮が真筆本において、『国』を『●(くにがまえの民)』と表記している例が見うけられることも、その独自の安国観念と何らかの関わりがあるものと推定される」(p111)。

日蓮が「国」を考える際に、苦しむ民衆のことが常に頭にある。日蓮の国家観には、現在の人権思想にも通じる優れた人権意識があったことは驚くべきことである、筆者は思う。

★目の前にいる人を大切にする

 目の前にいる人を大切にしたのが日蓮である。しかも後ではない。今その瞬間こそ大事なのだ。

その場にいる人を大切にする精神は、「周公旦は食するに三度吐き沐するに三度にぎる外典のあさき猶是くの如し況や内典の深義を習はん人をや」(御書p485、聖愚問答抄上)、「友にあふて礼あれとは友達の一日に十度二十度来れる人なりとも千里二千里来れる人の如く思ふて礼儀いささかをろかに思うべからず」(御書p1527、上野殿御消息)の文章にも見ることができる。友人が突然訪ねてきたときに、食事中であればその食べ物を3度も吐いて出迎え、一日に何回も来る人でも遠くから来た人と思い遇するという故事を引いて、門下に目の前の人を大切にするよう教えている。