★人間が人間を変える
(4)十界互具の重視
「一念三千説における十界互具の重要性については、『開目鈔』に「一念三千は十界互具よりことはじまれり」とあり、『撰時抄』に「一念三千は九界即仏界、仏界即九界と談ず」とある。また、『法華経』以外の経には十界互具が説かれてないので、成仏はできないと批判している」(p68)
衆生に「十界」が具わっているというのは、まだ生命の平面的とらえ方であるが、「十界」のおのおのに「十界」があるというのは、生命をダイナミックにとらえたものである。ユゴーの『レ・ミゼラブル』におけるミリエル司教の境涯は「菩薩界」であり、ジャンヴァルジャンの苦悩する現実は「三悪道」と言えまいか。「菩薩界」の生命が「三悪道」の生命を変えたのである。人間が人間を変えたと言えよう。