短期間の間に色々な事が起きて、私は動揺していた。


 父の事故、長女の卒園、そして小学校への入学、続いて次女の怪我。

 

子供の入学なんて大事な節目に、私は何故声が出ないのだろう?

 入学式までには出るようにと祈っていた声は出る事がなく、私は担任の先生に「声が出ない手」という事を手紙に書いた。


 入学してすぐあった懇談会は欠席した。

 それとは別で次女の幼稚園での懇談会や親子遠足等のイベントもあった。

 どうして春はこうも人と絡むイベントが多いのだろう。

 新しい環境、新しい顔ぶれで、宜しくお願いしますって事なんだろうが、今の私には辛いばかりだ。


 そんな中、私の気持ちを明るくさせてくれたもの。


 それは昔からの友人達だった。


 「また遊ぼうね」

と、別れたまま声が出なくなり、連絡出来なくなってしまった幼馴染に、勇気を出してメールをした。


「久しぶり。連絡出来なくてごめんね。実は父が事故に遭って、それがきっかけで声が出なくなっちゃったの。通院中でいつ治るかわからないんだ」


 私には小学校時代からの友人が二人居る。

 メールした彼女はその内の一人だった。

 もう一人にも、今度メールしよう。


 彼女からの返信は意外なもので、


「今度の週末会えない?子供旦那に預けて、二人で合おう」


 彼女も私同様に2児の母。


「合ってもいいけど、声でないよ?筆談だけどいい?」


「いいよ」


 そして、私達は地元の喫茶店で少しの時間お茶をすることになった。

 

「久しぶり!」


 彼女が現れた。

久しぶりと言っても、1カ月ぶりくらいだけど。

子供同士の年齢も近いので、彼女とはよく合う。


 私は彼女の質問に筆談で答えた。

彼女に隠す様な事は何もない。私は正直に答える。


彼女は私の書く文字を目で追いながら、うんうんと相槌を打った。


「私も一時期、心療内科に通ってたよ。ほら、あの結婚前に付き合っていた彼と別れた頃・・・・」


そして突然、カミングアウトした。


「そうなの?」


「うん、3カ月くらい通ったよ。仕事も変わった時に彼とも別れて、すごい情緒不安定になって。心療内科に行ったら、普通の会社員や女の人がいて驚いたよ。だって、本当にその辺にいる普通の人なのに、こういう場所に来ているんだからさ・・・。みんな、色々あるんだよね」


 私もうんうんと、頷いた。

そうだよね、皆色々ある。外側からだけじゃわからない。


 別れ際、彼女は、


「また遊ぼう」


 と言って、帰って行った。

 彼女は頭がよくて美人で、サバサバとした素敵な女性だ。


「声が出るようになったら、出なくなった時とは、絶対同じじゃないよ。出なくなった事には意味が有るんだよ。

今は身体が休めって言っているんだよ」


 彼女が残したその言葉が、ひどく印象的だった。


そうだね。


出ない今には、きっと意味が有る。

今はそれが何かわからないから、ただもどかしいけれど、いつかきっと解かる時がくるよね。



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