今日はとある世界で出会った、おばあさんのお話を書こうと思う。
語り手は、のすけ(男性ver.長期放浪者)なので、少しさっぱりした語し方になる。
(のすけは沢山の世界を放浪して特殊状態”文体変容”が起こる。のすけの特殊状態については、また別で書くつもりだ。)
とある世界には、時間や空間が乱れているらしい。その世界の住人は過去と現在を行ったり来たりしており、若い頃の思い出や昨日食べた夕食が同じ時空間にあると認識するらしいのだ。
この世界に移住しようとしているおばあさんがいた。
なんでも、頭がぼーっとして、訳が分からなくなってしまうのが悩みなのだそう。
この症状は世界同士の移動期間のようなものだと僕の世界観では考えているが、他でも起こるのだろうか。
気になった僕はおばあさんに詳しく話を聞いてみた。
現在の時空にあったことを、5分後には忘れてしまったり置いた物が消えてしまったりすることがある、とおばあさんは言った。
異世界に住んでいるユーザーの皆さまも似たような体験をしたことがあるかもしれない。
しかし、このおばあさんが移住しようとしている世界では、忘れてしまう頻度が異なるのだ。
毎回数分後には、ランダムな出来事の範囲の記憶が飛んでしまったり、混ざったりしてしまうそうだ。
つまり、昨日買ってきた食パンと30年前におばあさんが作り置きしたおにぎりが同時空間の机に置きっぱなしだったことを思い出し、片付けに行ったら机には何もない、といった具合だ。
これは異世界放浪者の僕でも混乱するし、訳が分からなくなる。(書いていても時空が歪んだ話なので、読みづらくなった。時空が混ざるとは恐ろしい。)
さらに、記憶が飛んでしまうタイミングも一定ではない。半年間覚えていた家族との約束が消えてしまったり、1年間忘れていた嫌な思い出がひょっこり出てきたり。食器を持った時に思い出したり、寝る前に忘れたり。
これは...。異世界人である僕が想像するだけでも大変な苦労だ。
そして、僕は思った。
何が起きているのだろう?と。
ここからは、あくまでも異世界放浪者である僕の考察になる。
きっと考え方や感じ方、細かな例えは僕の修行不足で伝わらないところがあるかもしれない。
ユーザーの皆様の住むそれぞれの異世界ではどのような現象、考え方ができるか、ぜひ書き込んでほしい。
あくまでも仮説だが、おばあさんは異世界への移住を行っているのではないかと僕は考えた。
これは僕が思うことなので、ユーザーの住む異世界では当てはまらないのかもしれないが、人物が同じでも、内側にある世界や見ている世界は複数あるかもしれないと考えている。
どんな人が見ている世界でも、その人の中やその人が見てきた中で習得された世界の理がある。
例えば、今回のおばあさんの見てきた世界には、物をすぐに忘れない世界と【記憶リセット】が起こる世界の二つ(もしくはそれ以上)が存在しているかもしれない。
ランダムな対象、過去に関する記憶の錯綜、これはおばあさんが移住しようとしている世界特有にある<理>、【記憶リセット】が働いているかもしれない。
少し整理してみる。
おばあさんの移住新世界の<理>、【記憶リセット】
1.【記憶リセット】の対象は過去に絞られる(未来ではない、予定などは書いたり伝えたりした時点で過去の出来事になると捉える)
2.【記憶リセット】はランダムな過去を消す
ランダムに過去が消されるため、ずっと昔の過去と最近起きた近過去の区別があやふやになる。
同じ動作や経験がある場合、例えば昨日食べた魚と3年前に食べた魚の情報が同時に消えた時、魚を食べた時間が曖昧になる。
このように、時間軸が徐々に曖昧になっていく。
3.【記憶リセット】は一時的に解除することができる
消えた記憶の範囲を確認することが出来た時、一時的に現在で起こっていることを思い出すことができる。
4.【記憶リセット】はランダムな記憶を思い出させる
1から3によって起きた混乱を戻すため、記憶を手繰り寄せようとした結果、
ランダムな時空間の記憶が思い出される。
先ほどの食パンとおにぎりの例がどのようにして起こったのかを考察する。
まず、2.により、近過去で机の上に何も物が置かれていない、という情報が【記憶リセット】で消えてしまう。
おばあさんは、【記憶リセット】に悩まされ混乱しているので、なんとか思い出せない何かを思い出そうとして4.を起こしてしまう。
4.により、食パンを片付けていない過去の記憶とおにぎりを片付けていない大過去の記憶を思い出す。
しかし、2,によって時間軸が曖昧になっているので、食パンを置いた時間(過去)とおにぎりを置いた時間(大過去)の区別が曖昧になり、
同時に机に置きっぱなしになっていると錯覚する。
そして、机を見に行くと実際には何も机には物が置いておらず、事実確認によって3.【記憶リセット】が一時解除され、消された記憶は近過去ではなく大過去であったことに気が付く。
こんな感じだろうか。
うまく伝えられていないところもあるので、のすけの書き込みレベルが上がったら伝わりづらいところを修正しようと思う。
もし、新しい世界の<理>がこのような摂理になっているならば、おばあさんは前に住んでいた世界とは異なってうろたえているのかもしれない。
新しい世界の理にうろたえながら、一生懸命【記憶リセット】が起こっても大丈夫なようにメモ用紙にびっしりと情報を書き込むおばあさんは本当に強い人なんだと思う。
おばあさんは、立ち話もなんだから、と言って僕を部屋まで案内してもらった。
部屋に入ったとき、僕は驚いた。部屋中、紙に書かれた文字でいっぱいなのだ。
ストーブのつけ方や消し方が書かれたメモがストーブに貼り付けられ、スマホの使い方のノートがあり、今日の日付には話したこと、散歩へ行った方向などが余った紙にびっしり書かれて机に散らばっていた。ドアノブには回し方を、テレビには電源のつけ方や消し方が書かれた紙が貼ってあった。
これは...呪文が張り巡らされている!
異世界放浪者であり、魔法使い見習いの僕にとって、おばあさんの部屋からはとんでもない魔力量が感じられたのだ。
なんと、おばあさんは、【記憶リセット】に立ち向かう術として前の世界で習得されたスキル”書き遺し”による魔法”メモ書き”を行っていたのだ。
書き遺した情報はおばあさんが必要な時に魔法として発動し、必要な情報を渡すことができるよう、至る所に呪文として残されている仕組みだ。
僕は魔法使いの見習いなので、"メモ書き"を使うことはできる。けれども、見習いを抜けられないのは、必要な時に必要な”メモ書き”を引っ張ってこれなかったり、呪文の書き方が悪くて必要じゃない情報を魔法召喚することが多い。そして、先輩魔導士に注意を受ける。
異世界放浪で、まさかの”メモ書き”Level. MAXを見ることができた。おばあさん、恐るべし...。
そんな僕の師匠でもあったおばあさんとお話をすると、
昔のことは、よく覚えている。最近のことはよくわからなくなっちゃった。おかしくなったのかな。
とおっしゃっていた。
僕の世界観で翻訳したところを含めると、こんな内容のこともおっしゃっていた。
”メモ書き”したことを【記憶リセット】されたり、呪文表を【記憶リセット】されたりして、昔みたいに上手に情報が扱えないから外へ行っても帰れなくなったことが増えてね...。
おばあさんの目には涙が溜まっている。
どうしよう、呪文表を忘れたり”メモ書き”を取り出せないのは、僕の世界では日常だ...。
僕の世界ではあんまり気にならないけれど、おばあさんは気落ちしている様子だった。
異世界人である僕は、僕なりの世界観でおばあさんに声をかけてみた。
「おかしくはないとおもいますよ。
それは前の世界の摂理と新しい世界の摂理が違うからわからなくなっているように僕は思うのです。
その世界の理に反することはつらいから。僕の世界で例えるならば、大きな水の流れに逆らうことはとってもつらい。そんな感じです。
だから、新しい世界の理を受け入れてみたらどうでしょうか。大きな水に逆らわず、一緒に流れたほうが楽しいし、面白いことに出会えるような気がするんです。
これは僕が培ってきた僕なりの世界の中での考え方だから、おばあさんは僕の言葉の好きなところからおばあさんの世界の言葉に【変換】してみてください。きっと、僕の考え方がすべて正しいわけじゃなくておばあさんの世界の中での正解があるはずだから。...」
うまく伝えられたかはわからない。魔法使い見習いレベルだから、おばあさんの世界の中で【変換】しやすい言葉を伝えられているかはわからなかった。
正直、僕は通常でも”メモ書き”を忘れてあたふたしている。おばあさんのスキル、僕の世界では本当にすごいものなんだよ。
一通り僕の気持ちを言葉に【変換】して伝えると、おばあさんはほっとした笑顔を見せてくれた。
「そんな考え方があったのね。楽になったわ、ありがとう。」と言ってくれた。
そして、魔法”メモ書き”Level.MAXを始めた。
あっという間に紙に記憶呪文や情報が書き込まれる。魔道具が出す、カリカリ、という音がここまで響くのはおばあさんのスキルが長年使われ続けたからなんだろうか。
”書き遺し”スキルが高くなると、こうも早く魔法が発動できるのだな、と僕は勉強になった。魔法使い見習いレベルだと、魔法を使うかどうかにも悩んだり躊躇してしまうことがある。すぐに行動できるおばあさんはきっと新しい世界でも僕よりうまくやっていくんだろうな。
おばあさんの使った魔法、”メモ書き”によって綴られた僕との会話は、おばあさんが大切にしている小箱の中へとしまわれた。
きっと【記憶リセット】が起こっても、思い出せるように。