『そう。私、死ぬのか』


そう考えたら、泣けた。…以前は。


だけど、ここ数日、違う。黒さ渦巻いた笑いがこみあげてくる。


そうかと思えば、突発的な、猛烈な怒りで何をするかわからない。


破壊。自傷。


気が狂にでも転じたか。…末期か。


嘔吐中、激しい憎しみに、浴槽の淵に頭を打ちつけた。


見るも無惨な、紫アザ。


隠そうとヒエピタでも貼ろうと思ったが、どうせ親が私の様子を見に来るわけがない。いいや。この紫の額のままで。


憎しみは、もはや着ることなんて無いのに、いつまでも捨てずにあった純白のウェディングドレスに向いた。


純白の生地に、私は深紅の塗料を垂らした。


左胸に。


乾かぬ深紅がこぼれるドレス。私は壁にナイフで突いた。


左胸に。


もう二度と、幸せに満ちた自分が蘇生しませんように。


狂に転じた私でも、たったひとつ、人らしい願いがある。


最期に、あの岬の夕暮れを眺めたい。


だからこうして、潔くなくても、期を待っている。


穏やかな夕暮れが見たい。





最期はなにを着ていこう?


それを映すスタンドミラーは、深紅に塗られ、もう何も移さない。


何もかも、準備はできていた。



…のに。



何故、また邪魔するのか。



晴れるなんて期待させといて、朝っぱらからザーザー降りじゃあないか。



今頃になって晴れてきやがって。



天気に振り回されるなんて、ダイキライだ。
 ★STAND BY мιа★-090510_1057~010001.jpg


疲レシ愚カ者ニ、


死ハ クダル。







台風さえ来ていなければ


今日にでも発てた。


…のに。