『そう。私、死ぬのか』
そう考えたら、泣けた。…以前は。
だけど、ここ数日、違う。黒さ渦巻いた笑いがこみあげてくる。
そうかと思えば、突発的な、猛烈な怒りで何をするかわからない。
破壊。自傷。
気が狂にでも転じたか。…末期か。
嘔吐中、激しい憎しみに、浴槽の淵に頭を打ちつけた。
見るも無惨な、紫アザ。
隠そうとヒエピタでも貼ろうと思ったが、どうせ親が私の様子を見に来るわけがない。いいや。この紫の額のままで。
憎しみは、もはや着ることなんて無いのに、いつまでも捨てずにあった純白のウェディングドレスに向いた。
純白の生地に、私は深紅の塗料を垂らした。
左胸に。
乾かぬ深紅がこぼれるドレス。私は壁にナイフで突いた。
左胸に。
もう二度と、幸せに満ちた自分が蘇生しませんように。
狂に転じた私でも、たったひとつ、人らしい願いがある。
最期に、あの岬の夕暮れを眺めたい。
だからこうして、潔くなくても、期を待っている。
穏やかな夕暮れが見たい。
最期はなにを着ていこう?
それを映すスタンドミラーは、深紅に塗られ、もう何も移さない。
