峠の頂上だな、一回止まろう

「ここは青垣峠、青垣町と生野町の境目になります」

青垣側は狭い道だったけど、生野側は広くなったね

「ここから先、黒川温泉の近くを通り抜けていきます」

じゃあゆっくり走っていこうか

【2022年6月1日丹波市青垣町】

「急に狭くなりましたね」

国道とは思えない狭さだね

「この間走った紀伊半島の425号を思い出します」

まああの道に比べたらいい道だよね

あの道は狭いし、荒れてるし、携帯電波はないし、

正直心細く感じたな

「杉の林を抜ける感じですね。」

切り立った崖の間を走ってる感じだな

坂きついか?

「この程度の勾配とペースでは余裕ですね」

「それよりよそ見しないでちゃんと運転してくださいよ」

わかってるよ。

【2022年6月1日 国道429号を辿る】

「ここを右ですね。429号に入りますよ」

はあい。やっぱり平日は道が空いてるねえ

「まあ、私のオーナーはあまり日曜休日に走らないですね」

仕事がね。平日に休みが回ってくるからね

「でもたまに日曜日家にいるでしょう」

だから、わざわざ混んだ休日に出かけたくなくなるの

「山が迫ってきましたね。」

ここから少し峠越え。気合い入れて走れよ

「オーナー、なめてもらっちゃ困ります。」

「高速を使わないってどういう風の吹き回し?」

どういうって、使うほど遠くに行くつもりないし

「でももう176号を丹波市まで来ましたよ

これくらいの距離だといつも高速でしょ」

初めから決めてたらね。今日は本当に何も決めてない

「道の駅あおがきを過ぎましたよ。ここで右折して北上しますか」

う、、、いや真っ直ぐ行って高源寺方面。

「天目楓の紅葉で有名なお寺ですね でも時期が・・・」

だね。そのままスルーして黒川に抜ける道があるよね

「国道429号ですね。今まで何度か通りました。」

その道で西へ向かおうか。行ける所まで

【2022年6月1日 国道429号を辿る その2】

ふらりとセローに跨る。今日も天気よさそう。

タタタタタ・・・と控えめで小気味よい音

「どこに行きますか?」

「今日は決めてない。とりあえず北にあがろう」

「今日は、ですか?今日も、ですよね」

「それ、言うな・・・いつもその日の気分次第だね」

「まあ、天気もいいし、ノンビリ行きますか」

「そうだな。今日はずっと下道で行こうか」

そんな会話をしながら走りなれた道を行く

先を急ぐライトバンが、飛んでいくように抜かしてゆく

狭い日本、そんなに急いでどこへ行く

えらい古い安全標語が頭をよぎる

【2022年6月1日 国道429号を辿る】

 

 中学時代からの友人に連れられて教わる旅も幾数回。中学時代からお互いの変わった部分、変わらない部分を感じながら共に同じ場所へカメラを担いで歩く。

 彼の後ろ姿に時折若かった頃の自分たちの思い出を重ねている。

 彼の話を聞きながら、食事を取る。

 彼と(ノンアルコール)ビールを飲む。

 その中で自分の人生を振り返れば、なんと怠惰に無駄な時間を過ごしているのだろうと思うときもある。

 その時必死に悩み、迷い、もがきながら生きてきたつもりであっても、振り返れば大して成長していなかった、そんな感じがする。

 多分これからも私はそんな人生を歩んでいくのだろう。それでも歩んでいくより他はない。遠く彼の後ろ姿を追いながら。

(2022年5月17日 「日本探訪 賤ヶ岳・旧北陸線」 おわり)

小刀根トンネルの先に、今は拡幅された刀根トンネルが

 旧北陸本線長浜~敦賀間のトンネルは、柳ヶ瀬・小刀根・刀根・曽々木の4箇所といいます。

 トンネル長約56メートルの小さな小刀根トンネルを抜けると、鉄路は次の刀根トンネルへと走っていきますが、その刀根トンネルは県道建設の際に大きなトンネルに拡幅されていました。

 小刀根トンネルを通して見ると、かつて真っ直ぐに線路が延びていた面影を感じることが出来ました。

(2022年5月17日)

小刀根トンネルの煉瓦積み

 

 

 小刀根トンネルの煉瓦積みは、長手ばかりを半分ずつずらして並べる長手積みという手法と、一列ごとに長手・小口を並べるイギリス積みの手法が見られるといいます。

 今回勉強不足で、これを知らずに行ったので、イギリス積みを観察できなかったことが悔やまれました。

(2022年5月17日)