子供の頃、
たぶん親には可愛がってもらってた
それでも記憶は思春期の頃以降のもので
いつも兄と比べられて
何をしても褒めて貰えなくて
認めて貰えなくて
私は要らない子なんだろうな
と思ってた
裕福ではなかったけど
不自由なく生かしてもらえてたのだから
きっと幸せな類の人間なんだとは思ってる

でも
いつも親に比較される対象のその兄は
優等生でも親孝行でもなく
父に怒られてはキレて部屋をめちゃくちゃにして
家を飛び出す
借金を作っては親に払わせ
単車も車も免許代は親に払わせる
バイクも買ってもらってた。
高校を中退し、とっとと家を出て
父がクモ膜下出血で倒れた時は
連絡を受けてかけつけたその日以外
二度と顔を出さなくなった。
知らぬ間に結婚し子供を授かり離婚して
また知らぬ間に結婚し子供を授かり離婚して
自由奔放という言葉が似合う
本物の自由人

多少やさぐれてみせても
授業をさぼっても
高校を卒業し
高卒後に働こうと思ったら
「せめて短大だけは卒業して
普通の人みたく生きて」
と母に泣きつかれ
頭が悪いなりに行ける短大を卒業した自分

何度思い返してみても
自分が哀れで惨めで笑える

自分勝手が勝者になる世の中なのか
生きるって難しい
って思った10代

21で契約社員採用で就職して
22歳でなんとか正社員になって早々
父が倒れた
一命はとりとめたけど
脳の損傷で後遺症が残り、
半身不随で満足に動けず
幼児のような笑顔で
言葉にならない言葉を喋り
怒りを覚えると
感情をむき出しに奇声を発する
威厳を保とうと必死だった
頑固な父の面影は残ってなかった

父の上司から早期退職を促され
社宅立ち退き期日が迫り
「賃貸なんて家賃払い続けられないから嫌だ」
と母に泣かれ
一人暮らしをしていた部屋を解約し
22でローンを組める額の中古マンションを購入
不本意ながら名義は私になり
『人生おわったなぁ』
と思った

要らない子なんだろう
そう思いながらも
母の涙に弱い自分が大嫌い