日本版「クレーマークレーマー」。

かあさんが出て行った後の 絵本画家のとうさんと 少女あかりの奮闘2人暮らし物語。

これも小6のときに初めて読みました。


作者の今江祥智さんは、児童文学の草分けの方。

この物語は、今江さんのノンフィクション?と思いながらそれを確認するすべがないまま、

20年以上がたちました。

この物語は どなたかが書いてらっしゃいましたが、究極の「性善文学」です。

つまり、悪い人が1人も出てこない。


生真面目なとうさんは、それまで包丁も持ったことがなかったのに育ち盛りのあかりのために、

毎日毎日カンペキな料理を作ろうと奮闘しているがクラッシュ気味。

そんなとき、絵本の弟子入り志願のお兄さんがやってきた。

板前から、絵本作家になりたいという異色の経歴の持ち主の彼は

ひとめでこの家に主婦がいないことを見抜き「交換授業させてもらえませんか?」

といって台所に入る。

今の時代なら、考えられない人間関係の距離感が これでもかという感じで

この作品の中では、生き生きと温かく表現されています。

あかりととうさんが周りの人に支えられて、大きく成長していくストーリーは

何度読んでも、あたたかく心を打ちます。

私は、好きすぎる本の中の世界とは 必ず人生シンクロする出来事が起こります。

ある日(私が20代になって) たまたま見に行った劇団の舞台に

「今江冬子」さんという女優さんがおられ、この方が あかり のモデルだと知って驚愕したり、

私が結婚式をした「ホテル・ニューグランド」はとうさんが一度だけ、

物語の中でほろにがい恋をした相手と落ち合った場所だったとあとでわかったりしました。


誠実に謙虚に、そして相手を包み込むような生き方をしているこの作品の登場人物たちは

私の人生の常にお手本です。




私が人生で一万回は読んだ本です。
きっかけは6年生のとき、松田聖子氏が「月刊明星」で薦めていた(笑)
「この本のカップルは 剛(ゴウ)とノリちゃんなんですよ。ウフフ」
なぁーんて書いてあった気がします。(松田聖子の本名はのりこさん)

6年生が読む本ではありません。カンペキな大人の恋愛小説です。
神戸の御曹司・中谷剛に嫁いだ乃里子は、今で言うセレブな生活三昧を送っている
子供はいず、2人は、夫婦漫才のような息の合ったカップル。
普通の家庭から嫁いだ乃里子は、その生活を面白がりながらも、何か違和感を覚えていた。

この小説のすごいところは、乃里子の女性としてのバランス感覚。
彼女は30代前半の設定ですが、センスがよく(すごいドレスも宝石も持っているのに
髪はショートでいつもナチュラルメイク。憧れはいつもハイジ)お料理が上手、主婦として才覚がある。
セックスには熱心なのに、パートナーの剛にいつも客観的に大人の愛で接することができる。
結婚前には、クリエィテイブな仕事を持ち、自立をしていたのに、
結婚後は、家庭に入りきちんと剛をサポートしている。
すべてのことに、女性的なねちっこい感情ではなく、心の声に正直に生きていながら、聡明な彼女。
その彼女が、少しずつすこしずつ剛との関係に、疑問を持つところは、今までの人生あまたな恋愛小説を
読みましたが、リアルかつもう完璧すぎて胸が痛いくらい。

「優しい声を出す自動販売機は全部品物が出尽くした」
「自分は、剛と別れて、役者にオンオフがあるように、本当の私生活に戻ったのかもしれない」
こんなくだりがあります。

私は、常に乃里子になりたくて、いや乃里子のようなバランス感覚のある女性になりたくて
どんな芸能人より、彼女を意識して生きてきたような気がします。
田辺聖子先生へお手紙を渡す機会があったときも
「今、私はどのくらい乃里子に近づけたか?生きる指針にしています」
と書かせていただいたくらい。

年もほぼ同じ、自分の好きな仕事をもつことができ、結婚もしました。まったく環境が同じではないけれど
乃里子のことが理解できるようになった今、思うことは
彼女にもほろ苦いせつなさがあったんだと 等身大で彼女を生々しく感じる今日この頃です。
男性に優しくしまくってしまった結果が、自分にかえってくるそのほろにがい想い。
乃里子をかみ締めながら、今日も読み返すのです。