先日、我が人生最大の恋愛話を、X (Twitter)経由でたくさんの人に読んでいただいた。

 

 

久しぶりに自分でも読み返したら、また長い文章を書いてみたくなったので、今日から書いてみます。もちろんこれも実話。

 

始まりは今から5年ほど前、私がまだ20代で大阪に住んでいた頃のこと。

 

当時、会社の後輩が某アプリで結婚したのをきっかけに、私は人生で初めてマッチングアプリをダウンロードした。

アプリ名は伏せるが、Tinderではない。

 

そこで、同い年のフリー編集者と知り合った。

 

名前はリョウ(仮)。

 

背が高く、肌が白く痩せていて、プロフィールに羅列された好きなバンドや作家がびっくりするほど私と同じだった。

おまけに彼はフリーの編集者であるにも関わらず、年収が高かった。

 

編集者は、大手出版社のエリートを除き、それほど儲かる仕事ではない。

だからフリーで稼いでる人は、たいてい編集以外の別の仕事もしている。

 

メッセージでさりげなく聞き出すと、彼も親が会社を経営していて、副業としてその手伝いをしているとのことだった。

 

当時、私は近いうち東京に戻ることが確定していた。

 

もし付き合うことになってもフリーランスならどこでも働けるし、彼自身も東京の大学を出ているから、一緒に上京してくれるかもしれない。

出版は斜陽産業で、編集の仕事などいつなくなるか分からないが、彼には家業もある。

 

これは…激アツ案件では…??!

 

会う前から、私の期待値は爆上がりしていた。

 

マッチして2週間後。

初めて飲みに行くことになった。

 

暑い夏の夜、待ち合わせの店の前で立っていると、事前に交換していたLINEがリョウから届いた。

 

<すみません!ちょっと仕事が押してしまい10分ほど遅れます!◯◯で予約してるので、先に入っててください>

 

ひとり店に入りぼんやりメニューを眺めていると、きっかり10分後、リョウが現れた。

 

「ごめんなさい!初対面なのに遅刻とかありえないですよね…本当ごめんなさい。あぁ、もう最悪だ…すみません。本当にすみません。ちょっと僕、汗を拭いてきます。あ、注文はビールで」

 

怒涛のようにそう喋ったリョウは、現れて5秒でトイレへと消えた。

 

遅刻とかどうでもいいんだけど、そんなことより…

 

写真と違うやないかーい!!!

 

後でさりげなく聞くと、リョウがアプリに掲載していた写真は「いちばん痩せていた頃」のそれで、実物は当時より推定8キロほど太っていた。

 

顔も、思ったよりタイプではなかった。

汗でおでこに張り付いた前髪を見た瞬間、よし、今日は友達コースだ!と私は覚悟を決めたのだった。

 

トイレから戻ってきたリョウは、前髪を綺麗に整えていてようやく落ち着きを取り戻したように見えた。

 

恋愛対象としては厳しかったが、同じ編集者で趣味も合うし、人としての興味は依然あったので、私はリョウの半生を聞いてみることにした。

 

「僕、恋愛体質なんです。歴代の元カノが全員メンヘラなんですけど、社会人3年目の時に、ちょっと事件に巻き込まれたことがあって…」

 

そして彼は、ある事件の話を始めた。

 

先に書いておくと、私がリョウに会ったのは、ただこの一度きりである。

 

それなのに私もまた、彼のせいで、数年がかりの事件に巻き込まれることになったのだった。

 

続く。