今年分の年末調整から、生命保険料控除について制度改正がおこなわれることが決まっています。

(住民税については、来年度より)


制度改正のポイントとしては、以下の4点です。

(1)「介護医療保険料控除」の新設
「一般生命保険料控除」「個人年金保険料控除」に加え、「介護医療保険料控除」が新設されます。

(2)各控除区分の適用限度額の変更
「一般生命保険料控除」、「個人年金保険料控除」、新設される「介護医療保険料」の所得控除の適用限度額が、それぞれ所得税4万円・住民税2.8万円に変更となります。
なお、3つの控除区分全体では、所得税の所得控除限度額が12万円となります。(住民税は変更なし(限度額7万円)

(3)適用控除区分の判定
主契約と特約の保険料について、それぞれの保障内容により適用となる控除区分を判定

(4)生命保険料控除の対象外となる特約などの取り扱い
身体の傷害のみに起因して保険金などが支払われるもの(例・傷害特約・災害死亡割増特約など)に係る保険料は、新制度では生命保険料控除の対象外となります。
このため、実際の払込保険料と生命保険料控除証明書に記載される金額が異なる場合があります。


これらについては、平成24年1月1日以後に締結した保険契約より新制度が適用されます。平成23年12月31日までに締結した保険契約は、従前の生命保険料控除制度が適用されます。


しかし、平成23年12月31日以前に締結した契約であっても、平成24年1月1日以後に更新・特約中途付加などを行った場合は、異動日以後、契約全体(主契約+特約)に対して新制度の控除区分が適用されるので、この点については注意が必要です。


なお、旧制度においての契約と新制度においての契約の両方を契約している場合は、「一般生命保険料控除」と「個人年金保険料控除」については、各控除ごとに、①旧契約のみで申告、②新契約のみで申告、③旧契約と新契約の両方で申告のいずれかを選ことができます。
「③旧契約と新契約の両方で申告」する場合は、合計額が申告額となりますが、所得税4万円・住民税2.8万円が所得控除限度額となります。また、全体の所得控除限度額は所得税12万円、住民税7万円となります。ここに関しては、新制度における契約が入れば、所得控除の限度額について、各控除区分ごとは従前よりも制限されるところに注意が必要です。


介護保険料控除を新設したことは、将来においての必要介護の自助努力を促す狙いがある一方、各控除区分の所得控除限度額を絞ることで、税額アップを狙っているようにも見えます。


個人年金保険については従前の契約のものを変更する機会はなかなか無いので、旧制度における控除限度額が適用され続けることになると思いますが、生命保険については更新単位が短いものや見直す機会が多いことから、新制度が適用される機会が増えるものと思われます。ようするに、控除限度額が減るわけです。その分を介護保険で埋め合わせすれば、所得控除限度額12万円までいけると思います。


税額アップについて簡単に言うと、いままで、一般の生命保険料控除5万円+個人年金保険料控除5万円(控除額計10万円)だった人で税率10%の人の場合、税額1万円(控除額計10万円の10%)安くなっていたのが、生命保険の契約更新等により、一般の生命保険料控除4万円+個人年金保険料控除5万円(控除額計9万円)となり、税額9千円(控除額計9万円の10%)となり、1千円の税額アップになるという計算です。


ということで、特に「生命保険」については、ご自分がどのようなタイプの生命保険に入っていることを確認して、どのような影響が出るのかを、あらかじめ知っておいたほうがよいと思います。給与支払者においても、年末調整における控除申告書の記載についての十分なチェックが必要になるとともに、必要なシステム改修をあらかじめやっておく必要があるものと考えます。


制度改正については、インターネットでいろんな情報が出ていますので、だいたいの内容は知ることができますが、適用対象外になる部分などは個別具体的に契約している保険会社に直接確認されるのがよいと思います。しかし、べらぼうに税額アップになるわけではありませんで、年末に向けて送られてくる控除証明書が着てから内容を確認してもよいかもしれません。私はここでは、「べらぼうに税額アップになるわけではない・・・」と申しましたが、人によっては年間で数千円アップでも大きいと感じる方もいらっしゃいますし、いろんなところでいままで受けていた恩恵が制限されてきている世の中ですので、じわじわと影響出るものと思います。

ペタしてね