息子が2歳を過ぎた頃、元気良く部屋の中を走り回っていたが、何かにつまづいた拍子に頭を思いっきり箪笥の角にぶつけた。額がぱっくりと割れ、おびただしい出血が!

 私と妻は慌てて近くの病院へ息子を連れて駆け込んだ。夜の8時を過ぎていたが、医者はすぐ傷口を縫うと言う。

 ところが、看護師さんは一人しかいない。先生曰く

 「お父さん、中へ入って子供を押さえて!」

 看護師さんは頭を押さえ、私は馬乗りになって息子の両腕を押さえた。

 額に麻酔が打たれ、傷口に針が刺され、傷口を縫い付けていく。

 息子は、「痛い!痛い!お父さん痛い!」と泣き叫ぶ。

 『頑張れ!頑張れ!』

 私は心の中で叫び、息子の手首を強く握った。

 ゆっくりと、一針、一針傷口が縫われていく。

 「痛い!痛い!お父さん痛い!」

 『頑張れ!頑張れ!』私の手は強く、強く息子の手を握りしめた。

 

 「痛い!痛い!お父さん 手 痛い!」