意識はハッキリしていないままリハビリが始まった。鎮静剤のせいか瞳は開いているが、黒目が上を向いている。何か嫌な予感がしたが一生懸命リハビリをする娘を笑顔で励まし続けた。
「つらいよな。でももう少し頑張ろ!」
と。
瞳の動きを心配したのか、帰りのエレベーターで妻は顔を覆った。
「あたし、無理だ。」
何が無理なのか、どういう心境なのかはその時は聞かなかった。しかし、少なくとも否定的な言葉を放つ妻にはがっかりした。怒りも湧いた。
「娘が一生懸命生きようとしているのに、何が無理だ?
言っていいことて悪いことがあるだろう。」
妻は子供のように泣き出した。
そして落ち着いて、自分と娘に謝っていた。
まだ治療始まったばかりなんだ。一喜一憂してたらいけないんだ。
「子供の前では常に笑顔で」
妻は自分に約束してくれた。
良かった。