心強いY 兄弟と言う二人の友達を、得たのらくろ少年の心は、一気に広がっていき、外の世界に興味が断然出てきました。


新しい出会いというものを、自ら手に入れたという自信が出たんでしょう。
新しい発見と出会いというものを求めて、外に出かけるのは楽しくなりました。


その日もそんな心持ちで、Y兄弟が学校から帰ってくるのを待つ間、一人で遠くの公園まで足を延ばしてみました。


まだ誰もいない公園で、駄菓子屋で買った駄菓子を食べて、ぼーっとしていました。


そこに現れた、明らかにのらくろ少年よりも体が大きい、見知らぬ年上の男の子たち4人のグループが、自転車に乗って公園に入ってきました。


完全に悪ガキという感じで、いきなり因縁を付けられました。

少年 A
「お前何勝手に公園に入ってきてんだよ!ここは俺たちのところなんだよ!出てけ!」

いきなりそんなこと言われて困惑しているのらくろ少年。

少年 A
「出てけっつってんだろ!」

と言ってやおら、突き飛ばされました。


いきなり暴力を受けたのらくろ少年、それまで喧嘩などしたことなかったので、さらに困惑しました。


困惑しましたが、元々気が弱い方ではないので、その子とつかみ合いになりました。
喧嘩のやり方など分からずもみ合っているところに、他の少年達が駆けつけてきて、一気に袋叩きに合いました。


為す術もなく、散々やられてしまい。戦意喪失。

少年たち
「俺たちには勝てねえんだよ。二度とくんなよバーカ!」


と言われ、のらくろ少年は失意のうちに公園をとぼとぼ後にしました。


集団でリンチするなんて卑怯じゃないか。

そしてあの少年たちの薄笑い。

とぼとぼ公園を後にしながら、そんなことを考えているうちに悔しくて、涙がどんどん出てきました。

自分の無力さも嘆いていました。

未だに覚えているひどい思い出です。


家路につく途中、泣いてなんかいたら、母親にこっぴどく叱られると思い、汚れた泥だらけの服を叩きながら、涙を流したことを隠すように、一生懸命手で顔を拭いました。


でも悔しくて涙がどんどん出てきてしまいます。


なんとか落ち着いて、玄関のドアを開けたら、

母親
「あれ?もう帰ってきたの?…ん?」


のらくろ少年の姿を見て、母親の形相は一気に変わりました。

母親
「喧嘩したのかお前。泣いてんじゃねえか。それで喧嘩は勝ったのか?」


一生懸命泣いたことを隠そうと思っていましたが、無駄な努力だったようです。


のらくろ少年
「何人にもやられたから勝てなかった。」


母親
「何!?何人にもって何人だよ」


のらくろ少年
「…4人…。」


母親
「関係ねえ!!それでやり返したのかお前」


のらくろ少年
「あまりやり返せなかった。」


ここで母親の形相はまた一気に恐くなります。


母親
「てめえやられっぱなしで帰ってきやがったのか!!!
のこのこ帰ってきやがって!!!
今からすぐにやり返して来い!!!
勝つまで家に入れねえからな!!
早く行け!!」


と言われ家からつまみ出されました。

鍵をピシャッと閉められ、ドアは開きません。


失意の中、自分の中でも悔しさがありましたので、母親の言うように、怖かったですが公園にまた戻ってきました。


あの少年たちはもういないかもしれないと思いながら、公園に戻ると先ほど4人だった少年が、2人に減っていて一番最初にもみ合った少年Aが、そのうちの1人。


のらくろ少年に気づいたその少年A。

4人の中でもそんなに強そうな感じの子ではありませんでした。


少年A
「お前ふざけんなよもう来るなって言っただろ!」


と言いながら近づいてきましたので、のらくろ少年は無言でつかみかかりました。

やり返すまでは帰れない。

無我夢中で掴みかかって、馬乗りになりました。

私の気迫がすごかったのかもう一人の少年Bも、加勢することなくドン引きしていました。


仲間が助けてくれないと思った少年Aは、一気に顔が引きつっており、

少年A
「やめろよ!わかったよ!」

少年B
「こいつ気持ち悪い。行こうぜ行こうぜ」

と言って、自転車に乗って公園から出て行きました。


4人全員には復讐できませんでしたが、一矢報いることはできたようです。


興奮冷めやらぬまま帰路に着きました。

しかしまだ玄関の鍵は開けてくれずドア越しに、


母親
「お前本当にやり返してきたんだろうなぁ」

のらくろ少年
「やり返したよ」

母親
「どう、やり返したんだよ?」


かくかくしかじか細かく説明すると、玄関のドアの鍵が開く音がしました。


母親
「よーし、よくやった。次も絶対負けるんじゃねえぞ!!よーし」


と言ってやっと家に入れてもらいました。

こんなスパルタな母親の教育。

もとより喧嘩を好まず穏やかな性格の方な私。どちらかと言うと父親似の性格。

しかし悔しくなったら、母親の DNA が発動するんでしょうか。

その日から、喧嘩には勝たねばならない。というのが、のらくろ少年のルールになりました。