子供の頃、従妹家族と一緒に実家の近所にある氏神神社へお参りに行った時のこと。

 

順番に手水舎で手と口を洗い清め、本殿に向かって歩いていると、どこからともなくお香のような匂いが漂ってくることに気がついた。

 

ぼんやりと「そばに仏様がいるのかな」と考えていた。

 

一向に消えない匂いを、幼い私は鼻をクンクンさせて辿ってみた。

 

すると、私自身の手の平に行き着いた。

 

ほんの少し匂うのではない。

 

しっかりと匂うのだ。

 

私たちが来る前に、誰かがお香に触れた手で柄杓を持ったのかと思い、私より先にその柄杓を使った従妹に聞いてみた。

 

「私の手、お香みたいな匂いがするんだけど、〇〇ちゃんの手はどお?」

 

匂わない、と従妹は言う。

 

実際に従妹の手の平を嗅いでみたが、全く匂わない。

 

その様子を見た母が

 

「そんなこと(匂うわけ)ないでしょ」

 

と、私の手の平を嗅ぐ。

 

「あら、本当だわ」

 

と、驚く母。

 

なんで私だけ?と怖くなり、そのあとはずっと腕を下げていた。

 

神社を後にし、その帰り道、そっと手の平を嗅いでみる。

 

全く匂わない。

 

あれは何だったのだろうと思う出来事の一つだ。

 

 

アラフィフ、今日もそろりと生きてます。