はじめに:なぜ今「MEP」が注目されているのか?
建築・建設業界で働いている方なら、一度は耳にしたことがあるかもしれません。「MEPとは何か?」と聞かれたとき、あなたは正確に答えられますか?
デジタル化が進む現代建設では、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)やCADの活用が加速し、それと共にMEP(Mechanical, Electrical, Plumbing)が中心的な役割を果たしています。
しかしながら、多くの現場では「MEPが重要なのは分かるけど、実際にどんなことを指すのか、どのように設計・施工に関わるのか」まで理解していない人も少なくありません。
本記事では、建築設計・施工に関わるすべての方に向けて、MEPとは何か、その設計・施工プロセス、BIMやCADとの連携、現場の課題と将来性までを分かりやすく、かつ専門的に解説します。
これからMEPを学びたい学生・若手技術者から、設計・施工をマネジメントする企業の皆さままで、すべての読者にとって実践的な知識となることをお約束します。
1. MEPとは?
1.1 MEPの定義

MEPとは、「Mechanical(機械設備)」「Electrical(電気設備)」「Plumbing(給排水・衛生設備)」の頭文字をとった総称です。
建築物を快適・安全・効率的に機能させるために不可欠な内部設備を指します。
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Mechanical(機械):空調(HVAC)、換気、排煙、エアハンドリングユニット(AHU)など
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Electrical(電気):照明、電源供給、通信ネットワーク、防災システム、避雷、監視カメラなど
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Plumbing(配管):給水・排水、ガス配管、雨水排水、衛生機器、消火設備など
これらの設備がなければ、建物は単なる「箱」にすぎません。MEPは、建物の**“命”**とも言える存在です。
1.2 なぜMEPが重要なのか?
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✅ 居住性・快適性を高める(温度管理、換気、照明など)
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✅ 安全性を確保する(防災、避雷、排煙設備)
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✅ 運用コスト・エネルギー効率に直結(省エネ設備、スマート制御)
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✅ 設計・施工の複雑性が高く、他分野との干渉が起きやすい(特に構造・内装との衝突)
このような理由から、MEP設計・施工の正確性と効率性は、建築プロジェクト全体の品質とコストに直結します。
2. MEPを構成する各設備の詳細
MEPは単なる略語ではなく、それぞれの分野が専門性を持ち、建物の機能と性能に大きく関わります。ここでは、**Mechanical(機械)・Electrical(電気)・Plumbing(配管)**の各システムを詳しく見ていきましょう。
2.1 機械設備(Mechanical)
主に空調(HVAC)と換気・排煙を中心としたシステムです。
快適な室内環境を保ちつつ、省エネ・安全性を両立するために極めて重要です。
主な構成要素:
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HVAC(Heating, Ventilation, and Air Conditioning)
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空気調和機(AHU)
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ファン・ダクト・ダンパー類
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エネルギー回収装置(熱交換器など)
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防煙・排煙設備
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温湿度センサーと自動制御システム(BAS連携)
✅ 設計ポイント:ゾーニング、風量バランス、ダクト経路の干渉回避、熱負荷計算
2.2 電気設備(Electrical)
建物に電力を供給し、照明・コンセント・ネットワーク・防災など、あらゆるインフラを支える基盤です。
主な構成要素:
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受変電設備
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配電盤・ブレーカー
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照明器具(LED、センサー付き)
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非常用電源(UPS、発電機)
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避雷設備・アース
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火災報知器・監視カメラ・入退室管理などのセキュリティ設備
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ネットワーク・通信配線(LAN、光ファイバーなど)
✅ 設計ポイント:負荷分散、系統設計、メンテナンス性、エネルギー管理、IoT連携
2.3 配管設備(Plumbing)
給水・排水・衛生・ガス・消火など、生活・業務の根幹を支えるインフラです。施工精度と漏水対策が非常に重要です。
主な構成要素:
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給水管・給湯管(直圧式/受水槽式)
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排水管・通気管(雑排水、汚水、雨水など)
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衛生器具(トイレ、洗面、シャワーなど)
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ガス配管(厨房・研究施設など)
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消火設備(スプリンクラー、消火栓、泡消火システムなど)
✅ 設計ポイント:配管勾配、勾配方向、貯水槽容量、気密性、音・臭い対策、安全基準の遵守
💡補足:これらのシステムは単独で動くものではなく、互いに密接に関連しています。
たとえば、機械設備のファン設置には電気が必要であり、機械室には排水のための配管も必要です。
よって、**「統合設計(インテグレーション)」と「干渉検討(クラッシュディテクション)」**が非常に重要になります。