夏希先生は週2回うちに来ていた。
基本的には英語と数学の勉強をした。
それ以外の教科は1人で勉強して、わからない
ところがあれば、夏希先生に教えてもらった。
学校に行った時に、担任の山崎先生に
高校を受験するのか?
と聞かれた。
はい。
と言うと、
出席日数が足りないから、
公立は受けるな。
私立を専願で受けても
受かるかわからない。
と吐き捨てるように言われた。
まるで、お前なんかが
受験するな!
と言われてる気がした。
高校に行ってもまた不登校
になるだけだ!
と…
高校受験は中学の成績や出席日数までが
合否にかなり影響するのだなと落ち込んだ
が、仕方がないと思った。
夏希先生に伝えたら
私立でもいいじゃん!
大丈夫だよ!
とまた、にかっと笑ってくれたから
そうだ、いいんだと思えた。
私はできることをやるしかない。
時々夏希先生は、
日曜日空いてる?
と聞いてきた。
もちろん何も予定がないから、
うん。
と言うと、
一緒にもんじゃ行こうよ。
とか
美味しいパスタ食べに行こう。
と誘ってくれた。
先生の車に乗って、ご飯を食べて
おしゃべりして、送ってもらう。
ドキドキしたけど、本当に本当に
嬉しかった。
日曜日を私に使っていいのかな…と不安に
なったけど、
夏希先生は楽しそうに笑っていた。
同じ大学の彼氏も紹介してくれた。
私は、夏希先生みたいな
学校ではない場所で
生徒の心の拠り所になれる
ような先生になりたい
と思った。
それが私の目標になった。
夏希先生といる時、
時々兄のことを考えた。
兄にも私にとっての夏希先生みたいな人と
出会いがあればいいのに。
兄とは全く話さなかったが、
そう思っていた。
兄の泣き出しそうな後ろ姿を見ながら、
そう思っていた。