スマホのアラームがなり目が覚めた。羽毛布団から手を伸ばしアラームを切る。鼻が冷たい。部屋がキンキンに冷えている証拠だ。いつもは妻と娘二人と同じ寝室で眠るから、鼻が冷たくなるようなことはない。しかし、今朝は早くにアラームをかけることもあって、いつもとは別の仕事部屋で寝たから仕方がない。羽毛布団から足を伸ばしてカーテンの向こうをうかがう。まだ暗い。重たいまぶたと気持ちに鞭をうち、仕事の準備を始めた。
早朝は音を立てないように忍のごとく用意をする。「そうしてくれ」と言われたことはない。ただ妻と娘たちの睡眠を妨げるようなことだけはしたくない。なので当然、ドライヤーも使わない。電動歯ブラシにいたっては「電動」を使わず「手動」で行う。「電動歯ブラシ」にとっては、とてつもなく屈辱的な行為だろう。しかし許してくれ。彼女たちを起こさないためなのだ。
仕事の準備が終わり、いつもの寝室のドアをこっそり開ける。並の泥棒よりも慎重にゆっくりと開ける。
そこには気持ち良さそうな寝顔たちが穏やかな寝息を立てている。
今日は大阪泊まりだ。
今日はもう会えないのか。
少し寂しく思いながらも、彼女たちのためにがんばろうと奥歯を噛んだ。
ほいでは。