この呪われた瞳が嫌いだった。
澄んでいて、それでいて濁っている、このベルベットの瞳が嫌いだった。
「そうだ、抉ってしまえばいい」
どこまでも深いベルベットの瞳。まるで深海のようで、鏡で見ていると、溺れるような感覚に陥る。
息が苦しくて、水面へと手を伸ばす。だけど、水面がまるで見えなくて。手足をばたつかせて。かは、と息を吐いた瞬間に、視界が灰色に戻っている。
呪われているんだ。ふらり、と首を傾けながら、今日もベルベットの瞳を「手に入れてしまった」ことを後悔する。
「そうだ、炙ってしまえばいい」
罪という言葉がある。謝罪という言葉がある。断罪という言葉がある。贖罪という言葉がある。無罪という言葉がある。有罪という言葉がある。
それならば、謝罪をしているのは私で、断罪をされているのは私で、贖罪をさせられているのは私で、無罪なんてものはなくて、有罪なんていうものがある。
――――これは、罰なのだ。
謝罪をしなかった、断罪をされなかった、贖罪をしようとしなかった、無罪も有罪もなかった、私への。
「そうだ、切ってしまえばいい」
当主になるための条件は、生まれながらにしてベルベットの瞳であること――。
ベルベットの瞳はいわゆる突然変異というものらしく、何色の親であろうとも生まれる可能性がある。
事実、この数十年に二人もその瞳を持つ子が生まれている。どちらも威厳と気品溢れる当主として君臨し、財を成し、「ベルベット・ゴールド」とまで言わしめた。
……そう、私のような偽物と違う、本物の「ベルベット・ゴールド」。本当に、羨ましい。
私は所詮「フェイカー」。威厳も気品も、この瞳さえもニセモノの、ただの人形なんだ。
「ふふ、ふ」
どこまでもニセモノなからっぽの笑みを浮かべ、今日も、このベルベットの瞳を呪う。
靴音を大袈裟に響かせ、ベルベットの床を歩きながら。