ほんの少しのおとうふやさん体験から、1話だけの幻の童話が出来ました。
「うーん、困ったなぁ。」
計算機をたたいてひろこさんはつぶやきました。
「これじゃあお客さんをご機嫌にできるどころか、そもそも私がご機嫌になれないわ。」
ここは小さな森のお家。大きな窓からは木漏れ日が差し込み、外からはウグイスの鳴き声が聴こえてきます。
「こんなに素敵な環境なのに、私の心次第で天国にも地獄にも行けるのね。ああそれにしても恐ろしい。こんな売り上げで暮らしていけるのかしら。」
ひろこさんはかわいい娘3人の顔をを思い浮かべました。ひろこさんはおとうふ屋の移動販売を始めたばかりでした。
「ああそれにしても恐ろしい。こんな時はとりあえずアレね。身体にくっついている恐ろしさを取りましょ。」
ひろこさんは、は〜っと大きく息を吐き出し、恐ろしさが身体のどこにくっついているのか調べ始めました。
「お腹ね。恐ろしさの正体は大きな石だわ。」
ひろこさんは、光の言葉セラピーという魔法の使い手でもあるのです。身体のどこが反応しているか調べたひろこさんは、さっそくおなかに大きな石がくっついていることを突き止めました。
さて次は、そのくっついている大きな石を取り除くことにしました。だって、それがずっとくっついていたら苦しいし恐ろしさが取れないままですもの。
「さて、どうやって取ろうかしら?」
ひろこさんはあごに手を当て、ムムムと考えました。
「ああ、こうやろう! ああやってこうやって、うん、それでいこう!」と取り方が決まってからは早かった、、、訳ではありませんでした。
お腹の石を取っても恐ろしさがやってきて、なんと喉に付いている石も見つけたりして、てんやわんやの大騒ぎだったのです。頭の中での出来事ですけれど。
魔法の後、しばらくゼイゼイと呼吸も荒く横になっていたひろこさん、無事に石が取れたことを確認しました。
「取れたわ。これでひと安心。」
恐ろしさの元となっていた石が取れ、やっと前向きな心が戻ってきたようでした。
「さあて、これからどうしてやろうかしら!」と腕まくりをして、パタパタととりあえずお家のお掃除を始めたのでした。お店とは関係ないことですがね!
さて、おとうふの移動販売を始めたひろこさん。初めのうちは付きものの次々とやってくる未知の出来事に、今まで身に付けた魔法の技も登場し、次々と乗り越えて行きます。
おっとりだけどパワフルな、ひろこさんのおとうふ屋さん物語。次回はどんなおはなしか、楽しみにしていてくださいね。