「今晩は、敦賀くん。派手にやってる
ね。」
ハイヤーで帰る女優を見送っていた
蓮は別のハイヤーから降りてきた古賀
に挨拶された。
「古賀くん、奇遇だね。オーディション
終わったの？」
蓮はさりげなく訊ねた。
「うん。ただ、結果は知らないよ。今、
審査中じゃない？紅葉は京子ちゃんと森
住仁子ちゃんが残ってて千鳥は５人くら
い残ってたなあ。」
「へえ。」
「興味ある？だったら少し付き合って
よ。」
「えっ、貴島くんもいたの？う～ん、
男三人って色気ないなあ。」
古賀の言葉に貴島は同意する。
「古賀くんがオーディションの子達を
連れてくればよかったんだよ。千鳥役
美人揃いだって聞いたよ。」
「そうなんだよ。でも、京子ちゃん、
俺タイプだなあ。」
古賀の言葉に蓮はビクッとする。
貴島は慌てて古賀に向かって首を
振る。
「彼女の紅葉は健気でさ。誰か片想い
の男でもいるのかな。」
なおも続ける古賀に貴島は両手でバツ
を作った。
「へえ。それは初耳だね。」
１オクターブ低めの冷たい声が
響いた。
微笑む古賀を見て貴島はピンと
来た。
(…さては古賀くん、わざと敦賀くんを
煽ってるな。)
「京子ちゃんは敦賀くんを信仰してる
そうだし、仁子ちゃんは敦賀くんから
ピンキーリング嵌めてもらったって自
慢してるし、敦賀信者ばかりだね。」
「古賀くん、ピンキーリングの話の
時、最上さんは居た？」
「ああ。」
「俺、ちょっと帰るね。」
蓮は立ち上がり、足早に帰って
いった。
「何、敦賀くんと京子ちゃん相思
相愛？」
古賀の言葉に貴島は首を捻る。
「敦賀くんはぞっこんだけど、京子
ちゃんはどうかなあ。あの娘、変だ
から。俺は気に入ってるけどね。」
「へえ。いいこと聞いた。俄然
楽し みになってきたなあ。明日から
の読み合わせがさ。」
End