「これ、すごく遅れたけど、バレンタイン
デーのお返し。」
ある日、先輩俳優から渡されたものは…。
「ピンキー・リング？！」
頷く先輩に凍り付くキョーコ。
(…ピンキー・リング配る趣味があるんで
すかっ！！)
目尻がつり上がるキョーコ。
「右手につけるとご利益があるけど、左
手は意味深だから…ね？」
悪戯っぽく笑う蓮にキョーコは不機嫌に
なっていく。
(…言われなくてもつけませんよっ！！)
右手の小指に嵌めてみる。指輪は緩くて
すぐ抜けた。
(…こんなにサイズ合わないなんて、いく
らどうでもいいからって酷すぎる！)
「緩くない？」
蓮に聞かれてキョーコはジト目で蓮を
見ながら首を横に振った。
「そうかな。貸して。」
蓮は指輪を受け取るとキョーコの
左藥指に嵌めた。
「ピッタリだ。」
蓮は満足気に言ったが、キョーコは
慌てて引き抜き、蓮に突き返した。
「敦賀さん、無神経です！」
キョーコは声を荒げ、走り去った。
「俺、本気なんだけどな。」
アールマンディ本社の特注品の
婚約指輪。バレンタインデーのお返し
として贈ろうとしたが失敗した。
もういっそのこと既成事実作っちゃお
うかな。
キョーコはラブミー部室で突っ伏して
泣いた。
こんな仕打ち酷すぎる！
いっぱい配った残り？！
きらきら光って高そうな気もしたけど
敦賀さんは大スターだもん。
あんな指輪10個や20個大したこと
ないのよ。
敦賀さんなんか大嫌いだ！！
「敦賀さんほどの人が振られたと？」
インタビュアーが驚いた。
「きちんと告白しなかったのが悪か
ったんですね。」
蓮は苦笑する。
「敦賀さんは紳士すぎるんじゃない
ですか？もっと強引にいってみては
いかがでしょう？」
「何か俺ごと抹殺されそうです。
彼女はものすごく真面目なので。」
「ほお。今どき珍しい。じゃあ、
大切にしなきゃないですね。」
「はい。大事な人です。」
蓮は神々スマイルを浮かべた。
「キョーコ！キョーコいる？！」
奏江がラブミー部室に駆け込んで
きた。
「モー子さん、ごめんなさい。お話し
する気分じゃないの。」
キョーコは力なく答えた。
「あんた、今日、敦賀さんから指輪
貰わなかった？」
奏江に聞かれてキョーコはぞんざい
に答えた。
「モー子さんも貰ったんですか？ピン
キー・リング。」
「はあっ？そんなわけないでしょ！」
呆れたように奏江は言い返した。
その時、また一人部室に飛び込んで
来た。タレント部主任の椹だ。
「最上くん、蓮から指輪貰わなかった
か！！」
「椹さんまで！何なんですかっ！！」
声を荒げるキョーコ。
しかし、松島主任、宝田社長まで
現れるとキョーコは何かおかしいと
気づく。
「皆さん、これは一体？」
「キョーコちゃん、こいつが言葉足ら
ずでごめんね。」
現れたのは社。そして一緒に連れられ
て来たのは蓮だった。
「今晩は、最上さん。驚かせてごめん
ね。」
「敦賀さん、一体どういうことです
か？」
「さっき、指輪を渡すとき、言い添え
るのを忘れちゃってね。」
「へっ？！」
「俺と結婚してください。」
End