「モー子さん!」
キョーコは声をかけようとしてハッと
した。
隣に母の冴菜がいた。
「あ、キョーコ。」
奏江は話しかけようとしたが、
キョーコは二人に軽く会釈すると
スッと通り過ぎた。
が、すぐさま振り返った。
二人は談笑していた。
美人弁護士と美人女優。絵になって
いた。
最近、冴菜には娘がいるという噂が
出た。それも女優だと。
そして皆がもしかしてと思ったのは
奏江だ。判事、弁護士役が似合う美人
女優。
二人からコメントがでないので周知
の事実となってしまった。
「あ~あ、モー子さんみたいに綺麗に
生まれたかったなあ。」
「最上さんは綺麗だよ。」
「敦賀さん!!」
突然の想い人の登場に驚くキョーコ。
「ふふ、やっと言えた。いつも遮られる
からね。」
蓮は悪戯っぽく笑う。
「つぅっ!TV局の廊下でそんな戯言を
////……誰かに聞かれたらどうするんで
すか!」
キョーコにたしなめられて蓮は苦笑す
る。
「本当のことだからね。綺麗で可愛く
て愛しい。」
「敦賀さん////」
真っ赤になるキョーコを蓮は抱き
締めた。
「君はもう人気女優だ。自信を持たな
きゃ。そして俺と付き合って欲し
い。」
「は…はい。ええええっ!!」
数日後。
「キョーコ、TV局で敦賀さんと抱き
合ってたんだって?」
奏江に問われてキョーコは赤くなった
り、青くなったりした。
「いえ、あれは、その/////」
「やっぱり、敦賀さんはあんたを狙って
た。私の勘は当たってたのよ。そうそ
う、その噂聞いてあんたの母親 心配し
てたわよ。」
「えっ?」
「松くんに振られたあんたが、日本で
一番人気ある俳優に本気で愛されるの
かしらって。手法があんたの父親と
そっくりだって眉間にシワを寄せて
言ってた。」
奏江の言葉にキョーコは思い当たっ
た。
父親は公衆の面前で冴菜を抱き締め
るような男性だった。そして冴菜を騙
して棄てた。キョーコはその結晶だ。
「お母さん、心配してくれてるんだ。
へへっ。」
キョーコは嬉しくなった。
「そこ笑うとこ?変な親子。」
End