美しい顔立ち。キスしたくなる唇。
愁いある表情で溜め息をついていた。
彼女は悩み事を隠していた。
昨日の夜、事情を社から電話でかい
つまんで聞いていた。
怒りがおさまらなかった。
なぜ、その時、社さんは俺を呼んでくれ
なかった？
俺はオフだったのに…。
確かに監督の姪に悪事を働かれて
口外はできないだろう。
しかし！しかし！
なぜ、最上さんは俺に話してくれ
ないんだ？
そんなに俺が信頼できない？
電話でおくびにもださなかったね。
楽しそうに笑っていた。
蓮は平静を装いながら沸々と怒りが
込み上げてきた。
「キョーコちゃん、お昼もしかして食べ
てきたかな？」
「いえ、まだです。」
社か昼食の話を振って、キョーコが三人
分の弁当を作ってきていることが判った。
蓮の頬は思わず緩んだ。
公園でピクニック。嬉しい、最上さん
の手作りだし…しかし！手にしているバ
レンタインのお返しはピクニックで渡
せるものではない。日を改めて…かな。
その時、一人の人物が現れた。
「こんにちは。俺もまぜてもらってい
い？」
微笑みを浮かべて現れたのは『泥中の
蓮』主演の古賀弘宗だ。
「最上さん、今夜、俺のマンションに
寄ってもらっていい？渡したいものがある
んだ。」
蓮はキョーコの耳許で囁いた。
「あ…はい////伺わせていただきます。」
頬を赤らめながら返事するキョーコに
蓮は満足げに頷いた。
不愉快さを隠せない古賀。
「さすが同じ事務所の先輩後輩。仲
がいいね。でも、これからは俺と仲良く
してね。君は俺に恋する役なんだか
ら。」
古賀はキョーコの頬に軽く触れて微笑
んだ。
蓮は似非紳士スマイルを浮かべたが
目は笑っていなかった。
キョーコを巡って抱かれたい俳優
No.1とNo.2が睨み合っているのだが、
当のキョーコは全く気づかず、「お天気の
いい日のピクニックって最高ですね。」
なんていってるのを聞いて、この娘は
やっぱり、大物だと思う社だった。
End
2018.9.11加筆修正