「オールアップ！！」
黒崎監督の掛け声に皆から歓声があが
った。
「「「「お疲れ様！！」」」」
キョーコは奏江とマリアに抱きついた。
「モー子さん、マリアちゃん。ありがと
う！」
奏江とマリアは顔を見合せ、頷いた。
「キョーコ、私達より先に挨拶するひと
いるんじゃない？」
「そうですよ。お姉様。」
二人はキョーコの身体を前に向けた。
「敦賀さん…。」
蓮がキョーコの目の前に現れた。
「お疲れ様、最上さん。話したいことあ
るんだけど？」
「……………。」
「キョーコ、いつまでも拗ねてないで敦
賀さんとお話してきたら？打ち上げは二
時間後だからそれまでに戻ってきて
よ。」
「そうですよ。蓮様にもいろいろ事情が
あるんじゃないですか？」
キョーコは俯いて拗ねていたが、蓮は
マリアの大人びた発言にクスッと笑っ
た。
「そうなんだ。いろいろ説明させて？」
二人はスタジオ内のカフェに向かい
合って座っていた。
「さあ、お願いします。」
膨れっ面のキョーコに蓮は苦笑する。
「ゴメンね。口を開くとすべてしゃべっ
てしまいそうだったので。」
蓮は捨てられた子犬のような目で
キョーコを見つめた。
「ずるい/////そんな目で見て///早く
説明してください。クオン・ヒズリさ
ん？」
キョーコは嫌味っぽく問いただした。
「最上さん、厳しいな。そうなんだ。
俺はクー・ヒズリの息子のクオン・
ヒズリだよ。」
「やっぱり！だから来日の時に先生を
空港にお見送りにきてたんですね。」
キョーコは一人納得していた。
クーとレッスンしているとき、誰かと
似ていると思ったのは蓮なのだ。
蓮はキョーコに敦賀蓮として来日した
理由をかいつまんで話した。
キョーコは時に涙しながら聞いてい
た。
「そういう訳なので今回の出演者にクオ
ン・ヒズリと明かす訳にはいかなかっ
た。」
「判りました。でも、同じ事務所の私
にお話いただいても問題なかったので
はないでしょうか？敦賀さんを尊敬
し、信仰しているプラス先生のお世話
係も仰せつかっていた最上キョーコ、
決して口外しませんが？」
キョーコは憤りを隠さず、蓮に
言った。
「う～ん。隠してるのがソレだけなら
ね。」
「え？」
「もう、一つ君に隠していたことがあ
る。」
蓮の言葉にキョーコは目を大きく
見開いた。
「俺はコーンだよ、キョーコちゃ
ん。」