スタジオロケが終了し、キョーコが帰ろ
うとした時に声をかけられた。
兼任マネージャーの社だ。
「キョーコちゃん、ちょっと蓮のとこに
寄ってもらってもいい？CM撮影中なんだ
けど伝言することがあって。」
「私、タクシーでひとりで帰れますから、
大丈夫ですよ。」
「すぐ終わるから寄ってくれる？蓮きっ
と喜ぶと思うから。」
社のキラキラした目に押されてキョーコ
は頷いた。
CMはエジプトのファラオに扮した
蓮が現代にタイムスリップして
ビジネスマンとして活躍するという
もの。
ファラオ姿があまりにも美しすぎて
スタッフの女性はキュン死状態で目に
したキョーコもごくりと唾を飲み込ん
だ。
(…敦賀さん、反則です。素敵すぎます
////この世のものとは思えません。)
その時、キョーコは、あ！と思った。
目に碧色のコンタクトを装着して
いる蓮はまるでコーンのようだと。
長い黒髪をなびかせ砂塵の中を歩く
蓮はコーンによく似ていた。
「はい、カット！敦賀くんOK！」
蓮は撮影が終わった時、キョーコが
来ているのに気がついた。
(…最上さん、来てたのか。コーンてバレ
ないか？コンタクトしてなくて。)
「蓮、例のオファーの件でちょっと打ち
合わせさせてくれ。キョーコちゃん、
ちょっとだけ待っててね。」
「はいっ！」
社の話は例のハリウッド映画の
主役に決定したことだ。
「映画が公開されたらお前もハリ
ウッドスターの仲間入りだな。」
「撮影が始まる前から気が早いです
ね。どうして最上さんを撮影現場に？」
蓮の問いに社はにやにやと笑った。
「だって蓮くんのファラオかっこいい
じゃない？さすがのキョーコちゃんも
キュンとするかなと思って。」
「ふーっ、しませんよ。彼女はラブ
ミー1号ですからね。」
「そうかなあ。そうでもないと思う
けどね。」
「？」
「何でもない。蓮、送っていく
ぞ？」
「俺、車で来ているので大丈夫で
す。」
「キョーコちゃんを乗せて帰る
か？」
社は嬉しそうに訊ねる。
蓮はコーンと気がついたのではない
かと気もそぞろだった。
「打ち合わせが残ってますから。」
「そうか。じゃあ、お疲れ様。
気を付けて帰れよ。」