「やあ。」
蓮の姿に坊ことキョーコはぎょっとし
た。
(…今週も?!敦賀さん、TBMにレギュ
ラーをお持ちですか!)
「やあ、敦賀くん。また、会ったね。」
キョーコは極力平静を装い挨拶した。
蓮がくすっと笑ったような気がしたが
気のせいだとキョーコは大きな頭を振っ
た。
「君に会いたくなってね。恋する男の
気分だよ。」
「な、何言ってるんだよ。可笑しい
よ。敦賀くん////」
蓮の言葉に狼狽えるキョーコ。
蓮は楽しそうに笑ったが、内心可笑し
くて仕方ない。
(…今度は君の考えてること教えてもら
うよ。)
マネージャーの社は現在キョーコ担当
で、収録中のキョーコを駐車場で待って
いるのを確認した。
蓮は自身でスケジュールを調整して
いるのでこの日は必ずTBMの仕事を
入れていた。
「君って料理上手なんだろ?俺も君の
番組に出たいな。駄目?」
蓮は得意の捨てられた子犬の表情で
アピールした。
(…最上さん、これに弱いよね?)
キョーコは一瞬ドキッとしたが、
必死で切り返した。
「そんなことない。僕の料理なんか
全然、下手でおいしくないよっ!」
「残念だな。じゃあ、俺は後輩に作って
貰う。後輩は女優の京子さん。料理上手
なんだよ。」
「え……。」
いきなり自分の名前が出てキョーコ
は狼狽えた。
「目が大きくて可愛い子なんだ 。
表情もくるくる変わって愛らしい。」
「そ、そうなんだ////」
信じられない言葉のオンパレード
にキョーコは声がうわずった。
「じゃあ、僕、仕事なんで。」
「ああ、頑張って。帰り食事一緒に
どう?」
「僕、何時になるか判らないよ。
えと、終わったあと、後片づけ
とか残業なんだ!」
キョーコの言葉に蓮は思わず
右手で口を押さえた。
(…鶏の残業って…ぷぶっ。これからは
毎週楽しみだよ。最上さん。)