「伯父様、急に国際電話なんてどうした
の？え、新ドラマの主演に私？うん、
やるやる！え、料亭で打ち合わせたい？
いいよ。いつ？」
仁子は伯父の森住監督の電話を受け
日本に戻ってきた。
着物を着てくるように言われたので
一点物の絞りの着物を着用した。
「失礼します。」
案内されて、部屋に入るとそこには
森住監督の他に仁子の両親、そして
人気俳優古賀弘宗が着席していた。
かしこまっていて、なんか、なんか
お見合い？！
「仁子もお年頃だし、誰かと考えたら
懇意にしている古賀くんどうかと思って
ね。」
森住監督がしれっといった。
(…やられた！敦賀さんや村雨さんなら
ともかく、タラシで有名な古賀さん？！
冗談じゃないわよっ！愛人、１ダースは
いるって噂じゃん。)
「いやあ、森住一族の仲間入りできる
なんて光栄だなあ。仁子さんは可愛い
し。」
古賀の言葉に仁子は身震いする。
(…嘘つきっ！籍だけ入れて遊ぶ気？！
この人の愛人ってお化粧ベッタリの
セクシー女優ばっかじゃない！ふざ
けるな！お断りよ！)
談笑する両親と古賀を睨み付けながら
仁子は言った。
「私、ハリウッド女優になるまで日本
帰らないから。当分結婚はなし！！」
仁子は着物を持ち上げてどすどすと
歩いて去っていった。
唖然とする森住監督と仁子の両親。
古賀は俯いて笑いを必死に堪えて
いた。
(…面白い！『泥中の蓮』から変な子だと
思ってたけど、あはは、笑える。本命
は京子ちゃんだけど、あの子もいいな)
End