この日は俺にとって楽しい1日だった。

   左に朝比奈ちゃん、右に京子ちゃん。

   まさしく両手に花。

   楽しく始まった食事会。

   場所は河豚料理店。

  「おつぎします。」

   京子ちゃんがお酌してくれた。

   可愛い。所作も綺麗だ。

   白い素肌もそそられる。

   シたいなあ。

   京子ちゃん、朝比奈ちゃんも俺も和服。

  『泥中の蓮』座談会ということで雑誌社が

 取材にきていた。

   「朝比奈さん、映画で苦心している所は

  どこですか?」

   「京言葉でしょうか。なかなか難しいで

  すね。」

   「その点、京子さんはたしか京都ご出身

   で楽勝ですね。」

   「それ以外で、苦心してますから///」

     話は進んでいく、なんだか体が痺れて

いる気がする。

     気のせいだ。俺は酒にめっぽう強い。

     座談会が終わり、女性ふたりを先に帰

 し、 記者と飲みに行く。

     その後、大阪の彼女のところに行こうと

   タクシーに乗ろうとしたところで記憶が

  途絶えた。


     次に目覚めたときは病院のベッドで

  点滴していた。

    「俺いったい?」  

    「河豚に当たり、かなり重症でしたよ。」

   看護師が話すと、二人の女性が駆け寄って

   きた。

       あっ!俺の彼女達!

    「大丈夫ぅぅ、心配したのよぉ。」

    「私、一睡もしてないのよぉぉ。」

      まずい、誰がふたりを呼んだんだ!!

     「ねえ、この女、何なの!」

     「そっちこそ、何なのよっ!」

         病室は修羅場と化した。


      「お取り込み中すみません。」

      やってきたのは呉前プロデューサーと

    花束を抱えた京子ちゃん。

         京子ちゃんは足元が震えている。

      「あ、あの…お大事に!」

       京子ちゃんは視線を反らしながら、

  花束を俺に手渡すと、彼女達の気迫に

  怯えて足早に帰ってしまった。

   (…君が大本命だよ!口説こうと思って

  たのにっ!)

    「私はだらしない人間か嫌いです。降板

   していただきます。」

       プロデューサーは汚らわしいといわん

    ばかりに言い放った。

  (…そんなぁ。俺は食中毒の被害者だっ!)


                                                        End    

   2018.12.18加筆修正