「最上さん、呼び出してゴメンね。」

   「いえ、大丈夫ですっ!」

   「渡したいものというのはこれなんだ。」

   
     蓮はテーブルの上にいくつかの箱を

 並べた。

     どれもきれいに包装され、リボンや

  チャームがついている。

    「バレンタインのお返しがこれで、グア

   ム土産がこれ。遅くなってゴメンね。」

    蓮がひとつひとつ説明した。

     「こんなに私がいただいてよろしいんで

  しょうか?も、申し訳ありません。お忙し

 いのに。」

     キョーコはテーブルに頭がつきそうなほ

  どの角度で礼をしようとして蓮に押し留め

   られた。

     「まず、開けてみて?」

     「はいっ!」

     キョーコはバレンタインのお返しを丁寧

 に開けた。意外と簡易包装。

     「!!!」

    中には三連のリングがヘッドについたペン

ダントが入っていた。

     「敦賀さん、こ、これ高級なんじゃない

ですかっ?ダ、ダイヤモンドがいっぱい付い

てますけどっ!!」

    キョーコは驚いてペンダントを持っている

手を震わせた。

    「イミテーションでお手頃価格だから。

 嫌でなければ、たまにはこれもつけて

 やってね?」

       「は、はい///」

     イミテーションと言うのは嘘。アルマン

ディに特注したもので、金額はキョーコが

聞いたら倒れてしまう金額。

     次にグアム土産を開けてみる。

  「わあっっ!!」

     有名ブランドの化粧品や香水が幾つも

入っていた。

   「空港の免税店で買ったので安いから。

琴南さんからもらったものはそろそろ使い

切るよね?俺からのも受け取ってくれる

ね?」

   「も、勿論でございます。」

    キョーコは蓮が自分のためにいろいろな

ものを購入してくれたことに感激していた。

    百瀬逸美との会話で自分にはバレンタイン

のお返しがないと思っていた。

   そもそも蓮と再会した日がホワイトデー

当日だったのだ。

  突然のプレゼントにキョーコは嬉しさのあ

まり涙が溢れてきた。

    「最上さん?」

    「す、すみません。頂けると思っていなく

て嬉しくて…すみません。」

     涙が止まらず、顔をそむけたキョーコ

 に驚く蓮。そして、ハッと気がつく。

    「最上さん、もしかして…君、俺のこと」

     キョーコは蓮に自分の気持ちを知られた

ことを悟り、顔を紅潮させた。

    「すみません、すみません。私などが、

すみません。」

     必死で詫びるキョーコ。

     「最上さん、こっちを向いて。」
 
      蓮は両手でキョーコの両頬を包んだ。

      「敦賀さん…。」     

      涙を溜めながら、キョーコは蓮を見上げ

 た。

      蓮の顔が近くにあり、胸の鼓動が止まら

  ない。

       「最上さん、俺のこと好き?」   

       「は…い。」

       「事務所の先輩として?男として?」

       「……男性として…です。」

         蓮はホッとため息をつく。両手は

     少し震えていた。

      「ありがとう。俺も君のことをずっと

   想っていた。愛してるよ、キョーコ。」
   
     「敦賀さん!」

       蓮とキョーコは初めてのキスを交わ

   した。