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「お話中ゴメン。長谷部さんと少し話したいんだけど」
言いながら、その長身の美人は大きな瞳で、どれがハセべなのか瞬時に探りを入れてきた。
圧。話し続けることを許さない、否応なしの入り方。
この人知ってる。入学式で結構目立ってた、あのキレイな人だ。
「私です」
小さく手を上げ、目を見返した。何かうちのグループに文句を言われるなら、仲間を守らないと。
「お!ちょっと立ってみてくれる?」
「?」
すかさず立ち上がると、
「イイね。ビジュ最高じゃん」
目線が僅かに上。女の子に見下ろされるのは、普段なかなかない経験。
「??」
「ウクレレ‥マンドリンだっけ?弾けるって聞いたんだけど。うちのバンドに入ってみない?」
お願い、じゃなくて勧誘。真っ直ぐに見つめてくる目を見ながら、いいな、なんかこの有無を言わさない強気キャラ。こっちも変に気を遣わなくて良さそう。第一印象って大事。最初に違和感を感じる相手は、その後色々あってもやっぱりどこか合わせにくい。
「ウクレレ。エレキギターはまだ練習中だけど、いい?」
「マジ?やった!安心して。ウチらみんなビギナーだから」
この人面白い。すごく手慣れた感じで誘うから、てっきりバンド経験者かと思ったら、初心者?なんだろ、この自信満々感。
「長谷部香織です」
お近づきの印に手を出すと、第一印象そのままの強い圧で握り返してきた。
「よろしく。私、山口綾」
やまぐちー。人生最初の失恋の、岐阜の山口くんが頭に浮かんだ。
「なに?ヤマグチに何かトラウマあんの?」
「えっ?私、声出てた?」
ヤバ。
「あっはっはっは!」
握った手のまま引き寄せてハグされ、背中をバンバン叩かれた。イッテ‥
「任せて!全山口代表として、イメージ上書きしてあげる!」
豪快、野蛮、威圧感。
でも、全然イヤじゃない。
話す言葉を、裏表ナシにそのまんま受け取っていいと思える何か確信のようなものが湧いた。
「よろしく。期待してるね」
「放課後,迎えに行くから!」
迎えって‥隣だし。変なの。
意気揚々と去って行く後ろ姿を見ながら、なんだかワクワクした。
「良かったネ!カオリン」
彼女が去って、ずっと息を呑んで見守ってたノリとミキがハイタッチしてくれた。
「うん、ありがとう」
なかなか一緒に帰れなくなるかもだけど。
やるからにはしっかりやりたい。
心の中で、ダディの部屋で聴いたビートルズの、ア・ハード・デイズ・ナイトのイントロのコードが鳴った。
ジャーン🎉!